外科系学会社会保険委員会連合(外保連)は3月30日、第24回記者懇談会を開き新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が外科診療に及ぼした影響について報告した。それによると、流行の第一波下では緊急性の高い手術については通常通り施行されていたものの、消化器・胸部外科手術などは顕著に減少したという。ST上昇型心筋梗塞(STEMI)に対する経皮的冠動脈インターベンション(PCI)は、第一波以降も施行率9割以上を維持できているものの、SARS-CoV-2のスクリーニングや個人防護具(PPE)着用などに時間を要し、Door to balloon time(DTBT)に延長が認められており、予後に影響を及ぼすことへの懸念が生じているという。

耳鼻咽喉科診療所で2割の減収

 懇談会では、各外科系学会の代表者から、COVID-19の流行が外科診療に及ぼす影響について報告がなされた。

 まず東京医科大学呼吸器外科・甲状腺外科主任教授の池田徳彦氏は、日本消化器外科学会が実施した全国アンケート(回答477施設)を基に、「4割の施設で消化器がん手術(食道、胃、結腸・直腸、肝・胆・膵)が昨年(2020年)3月または4月から制限された(首都圏で53%、首都圏以外で34%)」と報告した。

 昨年1月を基準に、同年3月の消化器外科手術実施率が7~9割に低下した施設は30%、7割未満に低下した施設は10%であったのが、同年4月には7~9割に低下した施設は38%、7割未満に低下した施設は19%にいずれも増加した。

 優先的に手術を行う消化器がんとしては膵がん(49%)、大腸がん(34%)、食道がん(8%)、胃がん(7%)であるという回答が多かった。

 また同氏は、日本胸部外科学会が実施したアンケート(回答588施設)では、昨年2~8月に胸部外科手術が減少した施設は66%に上り、減少率は平均31.9±22.5%だったことを明らかにした。

 次に東京都保健医療公社荏原病院耳鼻咽喉科医長の木村百合香氏は「COVID-19の初療を数多く担うのは耳鼻咽喉科である」と述べ、日本臨床耳鼻咽喉科医会、日本耳鼻咽喉科学会が合同で「耳鼻咽喉科診療所および一般病院におけるCOVID-19とインフルエンザの検査実施マニュアル」を昨年10月に作成したことを紹介。発熱患者の検査体制整備、外来診療確保事業に半数以上の耳鼻咽喉科診療所が参加し、「新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の検査体制の拡充に大きく貢献してきた」と解説した。

 しかし、COVID-19流行による受診控えの影響で、8割以上の耳鼻咽喉科診療所で今年1月の保険収入が対前年同月比で20%以上減少しており、「大変厳しい経営環境にさらされている」と同氏。耳鼻咽喉科医療供給体制の維持の必要性を訴えた。

 また、頭頸部がんをはじめとするがん患者の受診控えにより、がんが進行してしまうケースが増加傾向にあることや、手術制限により治療計画が滞り、予後に悪影響が生じかねない点についても懸念を示した。

 COVID-19診療に対応する公的医療機関においては、専門診療が制限されるために外科系医師に対する研修の機会が大きく損なわれている。そのため外科系医師が転出し、「結果としてCOVID-19対応を担う公的医療機関で診療の質が低下する可能性がある」と、同氏は指摘した。

STEMI患者に対し6割以上でスクリーニングを実施

 東海大学循環器内科教授の伊苅裕二氏は、日本心血管インターベンション治療学会が流行第三波下に実施した全国アンケート(回答395施設)の結果として、救急外来の受け入れに関して約4割の施設でCOVID-19による制限が生じていることを紹介した。一方、昨年4月中旬~今年2月中旬のいずれの時期においても、9割以上でSTEMIに対し通常通りPCIを施行しており、高い施行率を維持していた。また、昨年4月中旬にSTEMI患者に対してCTあるいはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)・抗原・抗体検査によるSARS-CoV-2のスクリーニングを行っていたのは19.3%だったが、それ以降スクリーニング実施率は上昇し、今年2月中旬には6割を超えている。

 同氏は「STEMI患者に対するPCIは、DTBT 90分以内に施行することが推奨されているが、COVID-19流行下においては、SARS-CoV-2のスクリーニングやPPE着用などの対応に時間を要し、DTBTの明らかな延長が認められている」と述べた。同大学病院ではCOVID-19流行以前に比べDTBTが20分程度延長し90分近くに達しており、神奈川循環器救急レジストリー(K-ACTIVE)に参加している神奈川県内25施設でも10分弱の延長が見られ、「患者の予後への影響が懸念される」と同氏は指摘。COVID-19確定例および疑い例に対応する際には、フルPPE着用などの準備に手間や負担がかかり、マンパワーが必要であることを訴えた。

COVID-19流行下で分娩数の減少を体感

 日本医科大学多摩永山病院院長の中井章人氏は、産婦人科診療への影響を解説。日本産婦人科医会が行った2020年全国実態調査(回答2,402施設)によると、昨年4月における全施設の外来患者は対前年比で15.0%減、入院患者は7.9%減で、全体として13.4%減だった。

 分娩取扱施設に限定しても同様の傾向が見られ、同4月における外来患者は対前年比で13.6%減、入院患者は8.1%減、全体として12.5%減だった。それ以外の婦人科診療所における外来患者は16.4%減と、受診控えとみられる影響が顕著だった。

 また、婦人科診療所で生殖補助医療(ART)を同4月に受療した外来患者は対前年比で21.0%減と落ち込みが大きく、「不妊治療に臨む人が著しく減少した」と同氏は述べた。

 同4月の収入実績については、全施設で対前年比7.2%減、分娩取扱施設では7.9%減、婦人科診療所では18.8%減だった。また、婦人科診療所のうちARTを実施している施設では14.3%減、ARTを実施していない施設では21.5%と著明な収入減が認められた。

 産婦人科における患者数の減少が出生数に及ぼす影響について、同氏は「2021年に入り、出生数の減少が予測されている。当院でも分娩数の減少は体感しているところであるが、昨今における出生数の減少傾向の範囲といえるのか、確定報告を待ちたい」と述べるにとどまった。

(渕本 稔)