関節リウマチ(RA)治療における生物学的製剤の有効性が示される中、経済的負担などを理由に投与を中止した後、再燃するケースが問題視されている。東邦大学膠原病学分野教授の亀田秀人氏らは、生物学的製剤の投与により寛解が維持されているRA患者を対象に前向き研究を実施。その結果、血中のバイオマーカーである可溶性腫瘍壊死因子受容体(sTNFR)1とインターロイキン(IL)-2の2つを組み合わせることで、生物学的製剤の中止後に起こるRAの再燃を高精度で予測できることが示唆されたと、Sci Rep2021; 11 :6865)に発表した。

生物学的製剤の自己負担額は年間20万~40万円

 持続性および破壊性の関節炎により関節機能障害をもたらすRA。日本における患者数は約70万人とされる。2003年以降、生物学的製剤の使用が可能となり、患者の20~30%が同薬を用いた治療を受けている。それにより寛解率は向上したが、同薬は高額であり、医療費3割負担でも年間の自己負担額は20万~40万円程度になることから、投与の中止を決断せざるをえない患者もいる。

 これまでの研究では、生物学的製剤を中止したRA患者の約半数が1年以内に再燃すると報告されている。しかし、中止時点で再燃の有無を予測することは、臨床症状や関節超音波検査所見などの従来法では困難であった。

3カ月以上寛解を維持した36例で検討

 そこで亀田氏らは、2014年11月~18年1月に生物学的製剤の投与により3カ月以上にわたって寛解を維持したRA患者のうち、高額な治療費などの理由で同薬の投与中止を希望した36例(女性29例、疾患活動性指数SDAI≦3.3、寛解期間の中央値20カ月)を登録。単変量解析を用いて、同薬の中止が再燃に及ぼす影響を検討した。対象の罹病期間は中央値で5.2年、中止した生物学的製剤の投与期間は中央値で2.1年だった。

 主要評価項目は、生物学的製剤の中止後2年以内の再燃(疾患活動性評価スコアはDAS28-ESR≧3.2、登録時からの増加>0.6)とした。再燃が見られない限り、包括的な臨床評価、関節超音波検査による40カ所の評価、血液検査による12種のバイオマーカーの評価を2~3カ月ごとに2年間実施した。

 中止した生物学的製剤の内訳は、腫瘍壊死因子(TNF)阻害薬が26例、非TNF阻害薬のアバタセプトが4例、トシリズマブが6例だった。生物学的製剤中止後2年以内(43~651日、中央値115日)にRAの再燃が認められたのは20例(55.6%)で、従来の報告と同等だった。

血中sTNFR1濃度低値かつIL-2濃度高値例では、83%が2年間寛解を維持

 再燃が認められず試験を中止した2例を除いた34例について単変量解析を行った。Kaplan-Meier法による分析では、生物学的製剤中止時に血中sTNFR1濃度が高いと、血中IL-2濃度にかかわらず、その後の再燃リスクは高まった(P=0.0041)。一方、血中sTNFR1濃度が低いと、血中IL-2濃度が高い場合に限り、その後の再燃リスクが抑制され(P=0.0058)、2年間にわたって寛解状態を維持できた割合は83%に上った。

 亀田氏らは「血中の2つのバイオマーカーであるsTNFR1とIL-2の組み合わせで、生物学的製剤中止後のRA患者における寛解維持を予測できる可能性が示唆された。今後は同薬の投与中止を従来よりも適切に判断することができる」と結論。「医療費の削減も期待できるだろう」と付言した。なお、今回の研究成果は、2020年7月に国内特許出願済だという。

(比企野綾子)