オーストラリア・Flinders UniversityのSean Mullany氏らは、同国の緑内障レジストリ患者を対象とした認知症スクリーニングを実施。高眼圧緑内障(HTG)よりも正常眼圧緑内障(NTG)で認知症との強い関連が示されたと、Br J Ophthalmol2021年3月29日オンライン版)に報告した。

NTG例とHTG例にランダム抽出し前向きにスクリーニング

 これまで、原発性開放隅角緑内障(POAG)と認知症の関連については複数の研究で示されているが、相反する報告も存在する。最近のメタ解析ではPOAGがアルツハイマー病(AD)のリスクを上昇させることが示された(相対リスク1.17、95%CI 1.00~1.37、P<0.001、Acta Ophthalmol 2019; 97: 665-671)。しかし、解析に組み入れられた個々の研究を見ると、ADとの関連が得られたのは、NTGが圧倒的に多いアジアでの研究(台湾、日本)や、NTG患者を多く含む欧州での研究であった。これらの点を踏まえ、Mullany氏らは緑内障と認知症の関連はNTGに特有のものであるとの仮説を立てた。

 同氏らはこの仮説を検証するために、オーストラリアとニュージーランドで進行緑内障患者を登録したレジストリから、年齢と性を一致させた65歳以上のNTG患者およびHTG患者をランダムに抽出。モントリオール認知機能評価の電話版(T-MoCA)による認知症スクリーニングを実施し、それぞれの認知症有病率を比較する症例対照研究を行った。T-MoCAは22点満点で、11点未満を認知症と定義した。

HTG群に対するNTG群の認知症OR2.2

 597例を抽出し、そのうち290例(NTG群144例、HTG群146例)が認知症検査を受けた。検査前の患者背景および眼関連の変数に両群で差はなかった。

 認知症の有病率は、HTG群よりNTG群で有意に高かった〔オッズ比(OR)2.2、95%CI 1.1~6.7、P=0.030〕。NTGとT-MoCAスコアの低さとの間にも関連が認められたが、有意ではなかった(P=0.108)。

 脳卒中、高血圧、糖尿病の既往や喫煙歴に関連した交絡因子を調整後の多変量解析でも、NTGと認知症の有意な関連は維持された(OR 2.6、95%CI 1.1~6.7、P=0.034)。

 同研究の強みとして、まずランダム抽出によるマッチングで両群の患者背景を一致させたことが挙げられる。また、後ろ向きレジストリ研究では認知症が過小診断されている恐れがあるため、認知症の前向き評価を行っており、検査には視覚的解釈を要する項目を含まないT-MoCAを用いて、視力低下に関連した交絡因子を排除している。さらに、290例のうち287例が欧州系であり、アジア系だけでなく欧州系においてもNTGと認知症が関連することを示したといえる。一方、認知症の症型ごとの検討は行われなかった。

 Mullany氏らは「今回の結果は、HTGよりもNTGの方が認知症との関連が強いという仮説を支持するものである。NTGと認知症の関係をより明確にするには、さらなる検証が必要である」と結んでいる。

(小路浩史)