聴覚障害者の外出に付き添う手話通訳者の派遣が新型コロナウイルスの感染拡大で難しくなり、スマートフォンなどの画面越しに通訳する「遠隔手話通訳」を導入する自治体が増えている。ただ、高齢者など機器を使いこなせない人が多く、利用は伸び悩んでいる。
 東京手話通訳等派遣センターによると、マスクを着ける人の増加で、聴覚障害者は相手の口元の動きや表情を読み取りにくくなっており、通訳の重要性が増している。
 だが、依頼者に発熱などコロナの疑いがある場合や、感染リスクの高い場所への同行は断らざるを得ない。同センターの手話通訳士、落合和代さんは「勤務中は原則マスク着用だが、意思伝達のために外さざるを得ない場面もあり、怖さも感じる」と話す。
 全国手話通訳問題研究会によると、こうした状況に対応するため、41都道府県29市町村が遠隔通訳の体制を整備した。研究会の宮沢典子理事は「通訳者は人口の多い地域に集中している。遠隔形式が普及すれば、通訳が少ない地方のニーズも満たせる」と期待する。
 普及には課題も残る。東京都八王子市は昨年4月にスマホの通話アプリを使った遠隔支援を始めたが、今年1月までの利用件数は81件。高齢者を中心にスマホに不慣れな人や、持っていない人が多いことが要因とみられ、通訳者派遣を含めた全体の支援件数のわずか1割にとどまっている。「映像が小さくて読み取りづらい」との不満も寄せられ、市は画面の大きなタブレットの貸与などを検討している。
 研究会の宮沢理事は「利用者だけでなく、通訳する側にも機器に精通していない人は多い。利用方法を学ぶ研修が必要だ」と強調。感染者が少ない地域では整備が遅れていることも問題という。
 全日本ろうあ連盟の中西久美子理事は「対面なら指さしで済むことが画面に映せず、伝えるのに苦労することもある」と指摘。「定型的な説明なら通じても、微妙なニュアンスや感情を伝えるのは難しい」と、さらなる改善を訴えた。 (C)時事通信社