スマートフォン(スマホ)やウエアラブル端末は、心血管疾患(CVD)患者の術後の「救世主」となりうるかー。米・Stanford UniversityのNeil Rens氏らはCVD患者を対象に、アプリで記録した院外での歩行テストのデータなどを基にフレイルの早期発見が可能か否かを検証し、結果をPLoS One2021; 16 : e0247834)に報告した(関連記事『6分間歩行距離で心血管イベント予測、100m減少ごとにリスク30%上昇』)。

CVD患者110例対象、6分間歩行テストを実施

 米国では末梢動脈疾患や心臓弁膜症、冠動脈疾患(CAD)の患者数が3,400万人に上り、CADによる死亡者数だけで2017年は36万人であった。これらの患者の身体機能レベルについては、フレイルおよびQOLの状態に基づき評価することが望ましい。そこでRens氏らは、自身らの研究グループが開発したアプリ「Vasc Trac」を用いて6分間歩行テスト(6MWT)など歩行に関するデータを収集し、フレイルの早期発見の予測能を検証した。

 対象は、歩行が可能で2018年5月〜19年5月に①心血管バイパス術または経皮的冠動脈インターベンション術を受けるCAD患者②僧帽弁置換術または経カテーテル大動脈弁置換術を受ける弁膜症患者③血管バイパス術または血管内皮術を受ける末梢血管疾患患者―のいずれかに該当した110例。実際に手術を受けたのは101例であった。その他の主な内訳は男性109例、平均年齢68.9歳、平均身長69.0インチ(約175cm)、平均体重195.3ポンド(約88.6kg)、平均BMI 28.8、喫煙者30%であった。

 患者には、Vasc Tracをインストールしたアップル社のiPhone 7およびApple Watch Series 3が提供された。同アプリにより毎日の総歩行数、1分以上継続して歩行した回数、毎日の総歩行距離のデータを収集した。6MWTは受診日には院内(術後2週間、1、3、6カ月)で、それ以外は自宅などで実施し、6カ月にわたり追跡した。フレイルは、院内での6MWTで歩行距離が300m未満と定義した。

院外でのフレイル予測能は感度83%、特異度60%

 検討の結果、110例における6MWTの実施回数は院内が450回、院外が2,019回で、総歩行数は5,800万歩であった。6MWTデータによるフレイルの予測能については、院内実施では感度90%、特異度85%、院外実施ではそれぞれ83%、60%だった。院外における消極的活動データと院内実施の6MWTデータによるフレイル予測能との間に相関が認められ、院外実施の6MWTデータと同等であった(曲線下面積は院外6MWT 0.704、消極的活動0.643)。

 今回の結果から、Rens氏らは「今回の前向き観察研究により、iPhoneおよびApple Watchを用いた患者の消極的活動データ収集が、院内における6MWTデータと同様に正確なフレイル予測能を有することが示された」と結論。「リモート環境下でCVD患者のフレイルおよび身体機能レベルをモニタリングや評価できる可能性が示唆され、患者をより安全かつ適切にモニタリングすることが可能になる」と期待を寄せている。

松浦庸夫