急性呼吸窮迫症候群(ARDS)への治療法が限られる中、副腎皮質ステロイド療法の有効性に関する明確なコンセンサスは得られていないのが現状である。中国・Sichuan UniversityのPing Lin氏らは、ARDSに対する副腎皮質ステロイド療法の有効性についてメタ解析を実施。同療法により死亡リスクが有意に低下したと、Crit Care2021; 25 : 122)に報告した。

RCT 9報・1,300例超を対象

 ARDSは集中治療室(ICU)入室患者の約10%で発生し、院内死亡率はおよそ40%と極めて重篤な肺疾患だが、治療法は限られている。Lin氏らは、明確なコンセンサスが確立されていないARDSへの副腎皮質ステロイド療法の有効性を検討するメタ解析を実施した。

 対象は、1987〜2020年にMEDLINE、Embase、Cochrane Libraryに登録された、ARDS患者に対し副腎皮質ステロイド療法を実施したランダム化比較試験(RCT)。"ARDS"の他に"急性肺障害(ALI)"も検索ワードに含めた。

 成人患者に限定し、①全死亡②28日後の人工呼吸器からの離脱日数③酸素化能の改善〔動脈血酸素分圧(PaO2)/吸入酸素濃度(FIO2)〕④有害事象ーのいずれかを評価した論文を条件としてRCT 9報・1,371例を抽出した。9報における死亡率は、副腎皮質ステロイド療法群が39.4%(709例中279例)、対照群が49.1%(662例中325例)であった。

人工呼吸器離脱にも有効

 ARDS患者への対照群と比較した副腎皮質ステロイド療法群における死亡のリスク比(RR)を求めた。その結果、副腎皮質ステロイド療法群では死亡リスクが有意に17%低下した(RR 0.83、95%CI 0.74〜0.93、P<0.01)。

 また、副腎皮質ステロイド療法群では28日後の人工呼吸器からの離脱日数(平均差3.66日、95%CI 2.64〜4.68、P<0.01)が有意に増加し、酸素化能の有意な改善〔標準化平均差4.17、同2.32〜6.02、P<0.01)が認められた。さらに副腎皮質ステロイド療法群は、対照群と比較べ新規感染症リスク(RR 0.84、95%CI 0.70〜1.01、P=0.07)および高血糖リスク(同1.11、0.99〜1.23、P=0.06)を上昇させないことも示された。

 以上の結果を踏まえ、Lin氏らは「ARDS患者に対する副腎皮質ステロイド療法は死亡率を低下させる可能性が示唆された」と結論。加えて、「同療法は標準治療の補助的位置付けとして推奨される見込みがあるものの、至適用量や期間は明らかでないため、今後の検証が必要」との見解を示している。

松浦庸夫