世界各地で猛威を奮っている新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で、予定されていた数多くの手術が延期され、病状の進行や生命予後の悪化が懸念される。関西医科大学外科学講座診療教授の里井壯平氏、埼玉県立小児医療センター麻酔科の藤本由貴氏、米・ウェイン州立大学小児科の黒田直生人氏らが参加する国際共同研究グループは、外科手術を受けた新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染者が術後30日以内に死亡するリスクは、非感染者の4~8倍に上るとの研究結果を、Br J Surg2021年3月24日オンライン版)に発表した。外科手術を予定している患者のSARS-CoV-2ワクチンを優先接種により、年間5万8,687人のCOVID-19関連死を防ぐ可能性があるとしている。

70歳以上では高い死亡リスク

 COVID-19のパンデミック第一波によって世界で最大70%の予定手術が延期され、2,800万件の手術が延期または中止になったと推定されている。

 研究グループは、世界116カ国1,667施設における14万1,582例の診療、臨床情報を収集。手術患者集団(がん患者を含む)と一般集団を対象に、SARS-CoV-2感染例と非感染例を年齢別に層別化し術後30日以内の死亡率を解析するとともに、1年間にCOVID-19関連死を1回防ぐために必要なワクチン接種数(NNV)をそれぞれ算出した。

 解析の結果、70歳以上でがん以外の疾患の手術を受けた患者において、術後30日以内死亡率はCOVID-19非感染例の1.57%に対し、感染例では12.03%と7.7倍だった。また、がん手術患者ではそれぞれ2.79%、18.64%で感染例では6.7倍だった。

 さらに、術後1年以内のCOVID-19関連死予防のNNVは、がん以外の疾患の手術患者が733回(最小407回、最大1,664回)、がん手術患者が351回(同196回、816回)と算出された。

中・低所得国ではワクチン接種の優先順位付けが可能に

 一方、18~49歳の若年・中年層の場合、がん以外の疾患で手術を受けた患者における、術後30日以内死亡率は、COVID-19非感染例の0.26%に対し、感染例では1.03%と4.0倍だった。がん手術患者ではCOVID-19非感染例の1.00%に対し感染例では3.63%と3.6倍であり、70歳以上の感染者ほど高くなかった。

 また、術後1年以内のCOVID-19関連死予防のNNVは、がん以外の疾患の手術患者が1万8,421回(最小5,920回、最大35万6,121回)、がん手術患者が3,922回(同1,086回、35万6,121回)であった。

 以上の結果を踏まえ、研究グループは「特に70歳以上で手術予定の患者やがん手術を受ける患者にはワクチンを優先的に接種した方が、COVID-19関連死を予防できる可能性が高い」と結論している。さらに、医療機材が十分に整っておらず、SARS-CoV-2ワクチンの購入力に乏しい低・中所得国では、限られたワクチンの接種対象者を合理的に優先順位付けすることが可能としている。

(小沼紀子)