非小細胞肺がん(NSCLC)患者の術後経過を予測する因子として、年齢、性、喫煙歴、がんの進行度、呼吸機能などが挙げられる。名古屋大学病院リハビリテー ション部の田中伸弥氏、同大学大学院呼吸器外科学教授の芳川豊史氏らの研究グループが行った術後NSCLC患者の後ろ向き観察研究により、術前の骨格筋量および運動耐容能も術後の予後予測因子に関連していることが示された。詳細はJ Cachexia Sarcopenia Muscle2021年3月4日オンライン版)に発表された。

NSCLC患者587例を後ろ向きに検討

 対象は、2014年1月~17年12月に同院で肺切除術を施行したNSCLC患者587例(平均年齢68.5±8.8歳、男性68%)。術前の胸部CT検査で第12胸椎の脊柱起立筋量が低値の患者をサルコペニアとし、6分間歩行試験の結果が400m未満の患者を運動耐容能低下と定義した。内訳はサルコペニアのみは26%、運動耐容能低下のみは9%、両方を認めたのは7%だった。追跡期間中(平均3.1±1.3年)に109例が死亡した。

サルコペニア+運動耐容能低下患者で死亡リスクが3.38倍に

 解析の結果、サルコペニアと運動耐容能低下のどちらもない患者と比べ、サルコペニアのみの患者〔ハザード比(HR)1.78、95%CI 1.08~2.93、P=0.024〕、運動耐容能低下のみの患者(同2.26、1.22~4.19、P=0.010)、サルコペニア+運動耐容能低下の患者(同3.38、1.79~6.37、P<0.001)では全生存期間(OS)が有意に短かった。また、運動耐容能が低下した患者は、無病生存期間(DFS)も有意に短かった(運動耐容能低下のみ:HR2.09、95%CI 1.36~3.21、P<0.001、サルコペニア+運動耐容能低下:同2.11、1.27~3.51、P=0.004)。

 さらに、年齢、性、喫煙歴、がんの進行度、呼吸機能など従来の経過予測因子に、骨格筋量と運動耐容能を含めた術後2年以降のOSおよびDFSの時間依存性受信者動作特性(ROC)曲線解析では、有意差はないもののROC曲線下面積(AUC)が高値を示した()。これらの結果から、骨格筋量と運動耐容能はNSCLC患者の中長期の予後予測因子として有用な可能性が示唆された。

図. NSCLCの術後経過予測因子別に見たAUC

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J Cachexia Sarcopenia Muscle 2021年3月4日オンライン版

 サルコペニアおよび運動耐容能低下は運動療法や栄養療法などにより改善が可能であることから、田中氏らの研究グループは「今回の知見はNSCLC患者における術後経過不良を予測し、術前のリスク層別化、至適介入法の選択につながる」と期待を示している。

(須藤陽子)