新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の入院患者では頻繁に急性腎障害(AKI)が見られるが、退院後の腎臓への長期的な影響は明らかでない。米・Yale University School of MedicineのJames Nugent氏らは、1,600例超のAKI患者を対象とした後ろ向きコホート研究で新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染の有無別にAKI患者における退院後の腎機能を比較。その結果、SARS-CoV-2陽性例の方が退院後の推算糸球体濾過量(eGFR)の低下率が大きかったとJAMA Netw Open2021; 4: e211095)に発表した。

COVID-19入院患者の24〜57%がAKIを発症

 AKIはCOVID-19による入院患者の24〜57%、集中治療室(ICU)入院患者の61〜78%で報告されている。 SARS-CoV-2陰性AKI患者に比べて、陽性AKI患者はより重度の腎障害による透析導入リスクが高く、入院中に回復する割合が低いため、慢性腎臓病(CKD)の発症や進行リスクが高まる可能性がある。

 Nugent氏らはSARS-CoV-2感染の有無別に、AKI患者における退院後6カ月間のeGFRの変化率の比較を目的として、2020年3〜8月に米国5病院で後ろ向きコホート研究を実施した。

 対象は、SARS-CoV-2の検査後にAKIを発症した患者のうち、退院後も生存し退院後3日以内に透析を必要とせず、退院後最低1回はクレアチニン値を測定した1,612例(年齢中央値69.7歳、女性50.4%)。SARS-CoV-2陽性者が182例(COVID-19群)、陰性者が1,430例(対照群)だった。 COVID-19群は対照群よりも黒人〔73例(40.1%)vs. 225例(15.7%)〕とヒスパニック〔40例(22.0%)vs. 126例(8.8%)〕の割合が高く、CKDと高血圧以外の併存疾患を有する割合が低かった。

 主要評価項目は両群における退院後のeGFR低下速度の勾配差、副次評価項目は退院までに腎機能がベースライン時のレベルに回復しなかった患者における、AKIからの回復までの時間とした。

COVID-19群でeGFRが大きく低下、勾配差-14.0

 混合効果モデルを用いた解析の結果、COVID-19群は対照群に比べ、eGFRの低下速度が速かった(勾配差-11.3mL/分/1.73m2・年、95%CI -22.1〜-0.4 mL/分/1.73m2・年、P=0.04)。患者特性および併存疾患を調整後も勾配差は大きいままで(同-12.4 mL/分/1.73m2・年、-23.7〜-1.2 mL/分/1.73m2・年、P=0.03)、最大クレアチニン値、入院中の透析の必要性でAKIの重症度を調整後も有意な相関が維持された(同-14.0 mL/分/1.73m2・年、-25.1〜-2.9 mL/分/1.73m2・年 、P=0.01)。

 退院までにAKIがベースライン時のレベルに回復しなかった319例では、COVID-19群は対照群よりも退院後の腎機能の回復が遅く、SARS-CoV-2陽性AKIと腎機能の回復率低下には有意な相関が示された(調整ハザード比0.57、95%CI 0.35〜0.92、P=0.02)。

 以上から、AKI患者におけるSARS-CoV-2陽性は、併存疾患やAKIの重症度とは独立して退院後のeGFR低下率の上昇に関連することが示された。今回の結果について、Nugent氏らは「SARS-CoV-2感染後にAKIを発症した患者の腎機能をモニタリングする必要性や、腎疾患を抑制するための介入研究の重要性を強めるものだ」と結論している。

(今手麻衣)