新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者では低用量アスピリンの服用により人工呼吸器装着リスクが44%低下することが分かった。米・George Washington UniversityのJonathan H. Chow氏らは、COVID-19で入院した患者が対象の多施設コホート研究で人工呼吸器装着などの重症化や転帰に対するアスピリンの効果を検討、結果をAnesth Analg2021; 132: 930-941)に発表した。

ICU入室、院内死亡も減少

 COVID-19患者では凝固能が亢進し、重症例の一部は血栓リスクが上昇する。そこで、Chow氏らは血栓予防作用を有するアスピリンの服用がCOVID-19患者の重症度、転帰に及ぼす影響を検討した。

 対象は、2020年3~7月に同大学病院などの医療施設に入院したCOVID-19患者412例。主要評価項目は人工呼吸器の装着、副次評価項目は集中治療室(ICU)入室と院内死亡とした。

 412例中98例(23.7%)は入院後24時間以内または入院前7日以内にアスピリンを服用し、314例(76.3%)はアスピリンを服用していなかった。

 検討の結果、アスピリン非服用群に比べて服用群では人工呼吸器装着率(48.4% vs. 35.7%、P=0.03)、ICU入室率(51.0% vs. 38.8%、P=0.04)が有意に低かったが、院内死亡率は両群に有意差はなかった(23.2% vs. 26.5%、P=0.51)。

 また、アスピリン非服用群と服用群で大出血の発生率(7.6%vs. 6.1%、P=0.61)、血栓症の発症率(8.9%vs. 8.2%、P=0.82)にも有意差はなかった。

 Cox比例ハザードモデルで人口統計学因子や併存疾患などの交絡因子を調整した解析では、アスピリン非服用群に対して服用群では人工呼吸器装着リスクが44%〔調整ハザード(aHR)0.56 、95%CI 0.37~0.85、P=0.007〕、ICU入室リスクが43%(同0.57 、0.38~0.85、P=0.005)、院内死亡リスクが47%(同0.53 、0.31~0.90、P=0.02)いずれも有意に低下した。

 以上から、同氏らは「低用量アスピリンの服用はCOVID-19入院患者の人工呼吸器装着、ICU入室、院内死亡の有意なリスク低下と関連していた」と結論している。

アスピリンの肺保護作用が増強

 シクロオキシゲナーゼ(COX)-1阻害薬であるアスピリンは抗血小板作用、抗炎症作用を有し、トロンボキサンA2の合成、血小板の凝集、血栓の形成を抑制する。また、アスピリンには肺における血小板・好中球複合体凝集の抑制、炎症の抑制、リポキシン形成の上昇など、肺内皮細胞機能の改善を介し、肺傷害への有益な作用を発揮すると考えられる。Chow氏らは「凝固傾向が非常に高く、血管内皮細胞機能不全が生じるCOVID-19のような疾患ではアスピリンの肺保護作用が増強する可能性がある」と指摘。さらに「アスピリンの抗炎症作用がCOVID-19の肺保護効果に寄与している可能性がある」と付言した。アスピリンは、心血管疾患患者においてインターロイキン(IL)‐6、C反応性蛋白(CRP)、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)を減少させることが示されており、これらの作用がサイトカインストームの発生を低下させる可能性があるという。

(大江 円)