東日本大震災から10年。コロナ禍において、被災地住民の心の健康はどうなっているのか。東北大学経済学研究科高齢経済社会研究センター・センター長の吉田浩氏らは、震災から10年を目前に控えた昨年(2020年)12月に、生活および健康に関するアンケートを実施。その結果、コロナ禍にあった昨年、被災地の宮城県と福島県で心の健康に不調を来した人の割合が多く、他者への信頼が希薄である傾向が見られたと、3月12日に同大学の公式サイトで発表した。

宮城、福島では県民の約2割が高ストレス

 コロナ禍において、東日本大震災から10年が経過した被災地住民の心の健康が懸念されている。そこで吉田氏らは、昨年12月にインターネットを利用して、被災した3県(岩手県、宮城県、福島県)、東京都、広島県の住民から1,400人の対象者を男女比が1:1となるように抽出し、心の健康と人々のつながりに注目したアンケートを実施した。

 心の状態を評価するため、2019年に厚生労働省が実施した「国民生活基礎調査」と同様、ストレスの度合いを表すK6スコアを算出。2019年の結果と比較した。

 その結果、K6が10点以上とストレス度合いが高い人の割合は、2019年は東京都(10.8%)、広島県(10.1%)に比べ、被災地(10.8~11.6%)でやや高かった。一方、コロナ禍の2020年は、全ての地域で高ストレスの割合が高く(13.7~19.6%)、中でも宮城県(19.6%)および福島県(19.5%)で顕著だった。

震災関連の転居が信頼関係の希薄さの一因に

 次に、心の健康状態が不良の人が多かった宮城県および福島県において、共通の社会的特徴があるかを検討した。社会的価値観として、人々のつながりに関する項目を調査するため、「一般的に人は信頼できると思うか」と質問した。それに対し、「全くそう思わない」または「あまりそう思わない」と回答した人の割合は、広島県の14.0%に対し、宮城県では22.9%、福島県では23.6%と、いずれも有意に高かった(それぞれP=0.05、P=0.04)。吉田氏らは「被災した両県では、人との信頼関係が構築されにくい可能性がある」と分析。その理由として、震災の影響による転居を挙げた。

 震災後約10年間における震災関連の転居の状況を地域別に見たところ、被災3県の震災転居率(5.7~9.3%)は、他の2地域(2.7%と1%)と比べて顕著に高く、とりわけ宮城県(9.1%)、福島県(9.3%)で高率だった。同氏らは「震災で住み慣れた地域から離れざるをえなかったことで、人々の結び付きが失われた。その影響が被災から10年たった現在でも、心の健康状態の差として現れたのではないか」と推察した。

 以上から、同氏らは「震災から10年が経過し、物的な復興は一区切り付いたとも言われている。しかし、物ではなく人々の結び付きを回復させ、コロナ禍のような社会不安の高まった状況下において、助け合い、信頼し合える地域社会を構築することが、今後の復興政策に求められるだろう」とまとめた。

(比企野綾子)