男性では加齢に伴いテストステロン値が低下するが、テストステロンの減少は血管内皮機能の低下に関連することが報告されている。オーストラリア・University of Western AustraliaのDaniel J. Green氏らは、中高年男性を対象としたランダム化比較試験(RCT)において、12週間のテストステロン補充療法と運動プログラムが血管機能に与える影響について検討。運動プログラムは血管内皮機能を有意に改善した一方、テストステロン補充療法には有意な影響が見られず、運動に同療法を追加した場合も有意な追加効果は認められなかったとする結果をHypertension2021; 77: 1095-1105)に発表した。

肥満状態の中高年男性80例が対象

 男性のテストステロン値の低下に関連した筋肉量の減少や活力の低下などの症状に対し、テストステロン補充療法が施行される例が増えつつある。しかし、テストステロン補充療法の有益性や、運動プログラムに同療法を追加した場合の効果に関しては、これまで一貫した研究結果が示されていなかった。

 そこで、Green氏らは今回、12週間にわたる2×2ファクトリアルデザインのRCTにおいて、テストステロン補充療法と監視下での運動プログラムが血管内皮機能〔血流依存性血管拡張反応(FMD)、ニトログリセリン誘発性内皮非依存性血管拡張反応(GTN)〕に与える影響を比較検討した。

 同試験では、50~70歳でウエスト周囲長が95cm以上、血中テストステロン値が低値~正常値(6~14nmol/L)の男性80例を、12週間にわたり①経皮テストステロン補充療法+運動プログラム群②経皮テストステロン補充療法単独群③プラセボ単独群④プラセボ+運動プログラム群-のいずれかにランダムに割り付けた。

運動プログラムでFMDが有意に改善

 その結果、テストステロン補充療法を施行した2つの群では、全体の62%で血中テストステロン値の上昇が認められた。運動プログラムを行った2つの群でも血中テストステロン値の上昇は認められたが、運動プログラムに加えてテストステロン補充療法を行った群で最も効果が高かった。

 一方、運動プログラムを行った2つの群ではFMDが上昇したが、FMDに対するテストステロン補充療法の有意な影響は認められなかった。

 また、運動プログラムにテストステロン補充療法を追加してもFMD改善への有意な追加効果は見られなかった(テストステロン補充療法+運動プログラム群:0.5%ポイント上昇、プラセボ+運動プログラム群:1.0%ポイント上昇、テストステロン補充療法単独群:0.7%ポイント低下、プラセボ単独群:0.2%ポイント上昇)。なおGTNに関しては、運動プログラムとテストステロン補充療法のいずれについても有意な影響は認められなかった。

 以上を踏まえ、Green氏は「健康だが活動量が少ない腹部肥満のある中高年男性で心血管疾患や糖尿病リスクに不安がある場合には、サポートを受けながら運動プログラムを実施すると血管機能の改善が期待できる」と説明。また、「テストステロン補充療法には下肢の筋肉量を増やすなどといった効果はあるものの、将来の心血管リスクに影響する血管機能への有益な効果は認められなかった」と述べている。

(岬りり子)