N3pGアミロイドβ(Aβ)を標的とする抗Aβ抗体donanemabが、早期症候性アルツハイマー病(AD)患者の疾患進行を、プラセボに比べて32%抑制することが示された。米・Eli Lilly社のMark A. Mintun氏らは、多施設二重盲検プラセボ対照第Ⅱ相ランダム化比較試験TRAILBLAZER-ALZの結果を第15回国際アルツハイマー・パーキンソン病学会(AD/PDTM 2021、3月9~14日、ウェブ開催)で発表。詳細がN Engl J Med2021年3月13日オンライン版)に同時掲載された。

認知機能と日常生活機能の複合スコアを改善

 同試験では米国とカナダの56施設において、PET画像でアミロイドおよびタウ蛋白質の脳内蓄積が見られる60~85歳の早期症候性AD患者257例(平均年齢75歳、女性52%)を登録。donanemab群(131例)とプラセボ群(126例)に1:1でランダムに割り付け、72週まで4週間隔で静脈内投与を行った。donanemab投与量は1~3回目が700mg、4回目以降は1,400mgとした。

 主要評価項目は、Integrated Alzheimer's Disease Rating Scale(iADRS)スコア(範囲0~144)のベースラインから76週までの変化量とした。iADRSは、ADの認知機能の評価尺度ADAS-Cog13と日常生活機能の評価尺度ADCS-iADLを組み合わせたもので、低スコアほど認知機能および日常生活機能の障害が重度(スコア低下幅が大きいほど機能低下の進行が大きい)であることを示す。

 ベースラインの平均iADRSスコアはdonanemab群(106.2)とプラセボ群(105.9)で同等だった。

 検討の結果、ベースラインから76週までのiADRSスコア変化量は、プラセボ群の-10.06に対し、donanemab群は-6.86でスコア低下幅が32%小さく(群間差3.20、95%CI 0.12~6.27、P=0.04)、donanemabによる有意な進行抑制効果が示された。

 副次評価項目としたADAS-Cog13単独、ADCS-iADL単独、臨床的認知症重症度判定尺度(CDR-SB)、Mini-Mental State Examination(MMSE)の各スコアも、プラセボ群に比べてdonanemab群で良好だったが、いずれも統計学的有意差は示されなかった。

24週で40%がアミロイド陰性化、タウは有意差なし

 ベースラインから76週までのアミロイドプラークの変化を18F-florbetapir PET画像で測定した結果、donanemab群(-84.13センチロイド)ではプラセボ群(0.93センチロイド)に比べて減少量が85.06センチロイド大きかった(P<0.001)。donanemab群では24週時点で40.0%、76週時点で67.8%がアミロイド陰性(24.10センチロイド未満)となった。

 一方、18F-flortaucipir PET画像で測定した同期間の全脳タウ蛋白質蓄積量の変化は、2群間で有意差がなかった(P=0.56)。Mintun氏らは「PET画像上のタウ蛋白質の変化はアミロイドの変化より遅れて発生する可能性があり、18カ月では観察期間が短くて検出できなかった可能性がある」と考察している。

26.7%にアミロイド関連画像異常-浮腫

 治療に関連するアミロイド関連画像異常-浮腫(ARIA-E)の発生率は、プラセボ群に比べてdonanemab群で有意に高かった(0.8% vs. 26.7%、P<0.001)。ただし、大部分は無症候性ARIA-Eで、donanemab群における症候性ARIA-Eの発生率は6.1%だった。

 以上を踏まえ、Mintun氏らは「早期症候性AD患者において、donanemabは76週時点の認知機能と日常生活機能の複合スコアをプラセボに比べて32%改善し、疾患の進行を有意に抑制した。ただし、各機能の単独尺度では有意差が示されなかった」と結論、「より長期かつ大規模な試験が必要」と付言している。

(太田敦子)