日本血液学会は3月15日、「新型コロナウィルス感染症蔓延下における血液疾患診療について―留意事項―1)」を公開した。留意事項では、専門外来や入院時〜入院後の対応、疾患別対応や血液内科病棟での新型コロナウイルス感染症(COVID-19)院内感染事例について解説している。本記事では特に血液疾患患者のワクチン接種について留意事項の内容を紹介する。なお、数値などの情報は全て3月15日時点のものとする。

ファイザーワクチン、薬効を高める2つの工夫

 留意事項の作成時点で、ファイザー、米・Moderna、アストラゼネカのワクチンの他、中国の2社(Sinovac Biotech、Cansino Biologics)、ロシア政府が開発したワクチンが世界各国で接種されている。ファイザーとModernaはmRNA、アストラゼネカとロシアはアデノウイルスベクター、中国は不活化ウイルスを用いている。わが国では2月14日に、ファイザーのコロナウイルス修飾ウリジンRNAワクチン(有効成分トジナメラン、商品名コミナティ)が承認され、2月17日から接種が開始されている。3週間の間隔で2回、筋肉内に接種する。

 コミナティは、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のスパイク蛋白質のアミノ酸配列をコードするDNAを転写したmRNAを用いている。「RNA修飾による安定化」「脂質ナノ粒子へのmRNA封入による優れた薬物送達」という特徴を有し、これらが高い有効性の基盤になっていると考えられる。副反応は局所痛、発熱、倦怠感、頭痛、関節痛などが20〜60%の頻度で報告されており、2回目の接種時において頻度が高いといわれているが、多くは軽微で数日で軽快するという。投与後のアナフィラキシーの頻度はインフルエンザワクチンよりも頻度が高いものの、10万人に1人程度とされている。

ワクチンの接種時期については議論の余地

 従来のワクチンと同様、免疫不全状態〔原発性/獲得性免疫不全、脾臓摘出後、B細胞/T細胞を標的とした治療後、化学療法後、大量ステロイド治療後、造血幹細胞移植・免疫細胞療法後、移植片対宿主病(GVHD)、リンパ球減少症、好中球減少症〕では、ワクチン接種による免疫獲得能が低いもしくは獲得できない可能性があるが、治験の対象における免疫不全患者は少数であり、エビデンスに乏しい。ただし、米国血液学会(ASH)、米国移植・細胞治療学会(ASTCT)、欧州血液学会(EHA)、欧州骨髄移植学会(EBMT)のいずれも、血液疾患患者へのSARS-CoV-2ワクチン接種は積極的に行うべきとしている。

 ワクチンの接種時期については議論があり、ASH/ASTCTは免疫抑制療法、脾臓摘出、移植が予定されている場合は少なくとも2〜4週間前に接種すべきとしているが、治療後にワクチンの効果が消失する可能性も高く、再接種の必要性を検討する必要があるという。繰り返し接種が可能か否かについては、ワクチン供給状況に依存する。

 再接種の時期については、留意事項では「6カ月以降が目安として示されている」とする一方、「ワクチン接種を遅らせることは免疫獲得が遅れることになる」とされている。わが国の優先接種者には基礎疾患として「鉄欠乏性貧血を除く血液疾患」「治療中の悪性腫瘍を含む免疫機能が低下する疾患」「ステロイドなど、免疫の機能を低下させる治療を受けている」が含まれており2)、血液疾患患者の大多数が対象となる。なお、同提言では疾患ごとの推奨される接種時期は規定されていない。

 ASH/ASTCTでは移植やキメラ抗原受容体発現T細胞(CAR-T)療法後3カ月以降であれば可能としている。EBMTでは感染流行期であれば移植3カ月前までに接種し、感染安定期であれば移植3カ月後からの接種を推奨している。ただし、グレードⅢ〜ⅣのGVHD、リツキシマブ投与後6カ月以内、CAR-T療法施行後6カ月以内で遷延するB細胞減少を示す患者などでは、ワクチンを接種しても免疫が獲得されない可能性があるため接種時期を慎重に考慮すべきとしている。留意事項では「移植後3カ月ではワクチン接種後の抗体産生能が不十分である可能性があることを考慮しつつ、地域・社会におけるCOVID-19の蔓延度合い、ワクチン供給と実際に接種が可能な時期との兼ね合いを踏まえ、接種時期を慎重に判断すべきであろう」と提言している。

 なお、コミナティは筋注製剤であることから、血友病患者では筋肉内出血を来すリスクがある。具体的な対策については、日本血栓止血学会と日本血液学会の合同のアナウンスメントが発表される予定であるという。

(安部重範)