日本は先進国の中でも特に歩道設置割合が低いが、そのことで高齢者の健康になんらかの影響を及ぼしているのか。東京医科歯科大学国際健康推進医学分野の谷友香子氏らは、日本老年学的評価研究(JAGES)調査のデータを用いて、自宅の近隣の道路状況と認知症の発症との関連を検討。解析の結果、歩道面積の割合が小さい地域に比べ、大きい地域の住民は、認知症の発症リスクが45%低いと、Am J Epidemiol2021年2月19日オンライン版)に発表した。

解析対象は高齢者7万6,000例超

 歩道が整備されているかどうかは歩く上で重要だ。しかし、歩道が高齢者の健康に及ぼす影響についてはよく分かっていない。そこで谷氏らは、2010年に実施したJAGES調査の参加者7万6,053例(年齢65~103歳、男性3万5,475例、女性4万578例)のデータを用いて、近隣の歩道面積の割合と認知症発症との関連を検討した。

 歩道面積の割合は、小学校区当たりの全道路面積に占める歩道面積とした。地理情報システムを用いて436の小学校区における歩道面積の割合を算出し、四分位に分類した。認知症は、「認知症高齢者の日常生活自立度」のランクⅡ以上と定義した。

都市部では歩道面積と認知症リスクに有意な関連、農村部では関連見られず

 検討の結果、歩道面積の割合が最も小さい第1四分位群は3万1,991例、第2四分位群は2万2,661例、第3四分位群は1万1,847例、第4四分位群は9,554例だった。平均3年間の追跡期間中に、5,310例が認知症を発症した。

 年齢、性、教育歴、経済状況、世帯状況、婚姻状況、就労状態、健康状態(高血圧、糖尿病、難聴、心臓病、脳卒中、うつ、手段的日常生活動作、認知機能)、居住期間を調整して解析したところ、第1四分位群に対して第4四分位群では、認知症の発症リスクが45%有意に低かった〔ハザード比(HR)0.55、95%CI 0.45~0.68、P<0.0001〕。

 居住地域の都市度別(都市部か農村部か)に解析したところ、都市部では歩道面積の割合が大きいと認知症の発症リスクは有意に低いことが示された(第1四分位群に対する第4四分位群のHR 0.49、95%CI 0.38~0.63、P<0.0001)。

 一方、農村部では都市部で示されたような関連は認められなかった(第1四分位群に対する第4四分位群のHR 1.28、同0.91~1.81)。その理由として、谷氏らは「農村部では、都市部に比べて自動車を利用する人が多く、外出の頻度は低い。歩道を歩く機会が少ないことが、今回の結果に影響したのではないか」と推察している。

 以上から、同氏らは「都市部では、歩道が多く歩きやすい地域に住むことが、認知症の発症予防につながる可能性がある」と結論。「居住地が認知症リスクに影響するメカニズムを解明するには、さらなる研究が必要だ」と付言している。

(比企野綾子)