就労者の腰痛は業務の生産性を下げ、社会的・経済的負担の増加につながることが指摘されている。それは医療従事者にとっても変わらない事実だ。台湾・Chi Mei Medical CenterのHue-Yu Wang氏らは、1万人超の薬剤師を対象に腰痛とその危険因子について検討した。勤務先の規模が関与するとの結果を、Medicine2021; 100: e24830)に報告した。

高年齢層ほど腰痛を発症

 Wang氏らによると、一般人口の50〜80%が腰痛を訴えており、男性は40歳代以上、女性は50〜60歳に多く見られる。医療従事者においても腰痛は深刻な問題だが、薬剤師の腰痛については報告が少ないという。

 そこで同氏らは、台湾国民健康保険研究データベース(NHIRD)から2000〜13年における薬剤師1万470人(20〜40歳)を抽出。腰痛による入院または3回以上の外来受診を「腰痛」と定義し、非腰痛群(8,732人)と腰痛群(1,738人)に分けて腰痛危険因子について検討した。

 両群の背景を見ると、平均年齢(非腰痛群26.16歳、腰痛群27.08歳)は腰痛群でわずかに高く、年齢が高い30〜40歳の割合(同71.51%、28.49%)は腰痛群で有意に多く、勤務施設では99床未満の小規模病院および地域診療所(非腰痛群76.49%、77.19%、腰痛群23.51%、22.81%)の薬剤師ほど腰痛群が有意に多かった(全てP<0.01)。なお、男女間で有意差はなかった。

小規模病院勤務でリスク2倍、糖尿病や痛風の合併もリスクに

 Cox比例ハザードモデルを用いて、非腰痛群に対する腰痛群の腰痛危険因子を検討した。その結果、年齢、性、勤務施設を調整後のハザード比(aHR)は男性(1.12、95%CI 1.01〜1.24、P=0.04)、勤務先が小規模病院(同1.94、1.65〜2.29、P<0.01)または地域診療所(1.60、1.35〜1.91、P<0.01)、大規模病院(1.38、1.17〜1.63、P<0.01)、個人薬局(1.24、1.03〜1.50、P=0.03)が有意な因子として抽出された。併存疾患別に見たところ、糖尿病(aHR 1.55、1.20〜2.01、P<0.01)と痛風(同1.70、1.37〜2.09、P<0.01)が有意な因子であった。

 これらの結果を受けて、Wang氏らは「全国規模の人口データを用いた、薬剤師の腰痛における危険因子を検討した初めての研究により、年齢と正の相関が認められた。また勤務施設および糖尿病や痛風の合併が有意な危険因子であることも示唆された」と結論。腰痛リスクが2倍近く高い小規模病院での勤務については、「勤務する薬剤師は特に注意を払うべき」と付言している。

松浦庸夫