周術期に新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に感染している場合、手術後の死亡率が上昇することが報告されており(Lancet 2020; 396: 27-38)、多くの場合、手術の延期や手術を回避する治療法が選択される。英・University of Birminghamが中心となって結成したCOVIDSurg Groupが行った日本を含む国際共同前向きコホート研究によると、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者の手術施行をSARS-CoV-2陽性確認後7週以降に延期すると、術後30日死亡率は非感染患者と同程度まで低下することが明らかになった(Anaesthesia 2021年3月9日オンライン版)。

世界116カ国1,674施設の14727例対象

 COVID-19患者の手術リスクは高く、術後30日の死亡率は25%近くに上り、70歳以上の高齢者では緊急手術や身体的負荷の大きな手術で死亡リスクがさらに高まることが明らかとなっている。

 国際的なガイドラインでは、SARS-CoV-2陽性患者に対しては手術延期が推奨されているが、いつまで延期すべきかを示したエビデンスはほとんどなく、現場の外科医が患者の状態を見ながら個別に判断するしかないというのが現状である。

 COVIDSurg Groupは、日本の47施設を含めた世界116カ国1,674施設から、2020年10月に手術を行った14万727例の臨床データを前向きに収集(日本側窓口は関西医科大学外科学講座診療教授・里井壯平氏)。逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)検査でSARS-CoV-2の感染が確認された3,127例と非感染の13万7,314例における術後30日の死亡率を比較した。

年齢、重症度、緊急性などで層別化しても同様の傾向

 3,127例をSARS-CoV-2の陽性確認から手術施行までの期間で層別化すると、0~2週群1,138例(36.4%)、3~4週群461例(14.7%)、5~6週群326例(10.4%)、7週以降群1,202例(38.4%)だった。

 ロジスティック回帰分析により、年齢、性、ASA分類、RCRI(周術期における心合併症リスクの指標)、手術の適応、手術のグレード、緊急性、呼吸器合併症の有無、国民所得を調整した結果、非感染群の術後30日死亡率は1.47%だった。

 SARS-CoV-2感染例における調整後の術後30日死亡率は0~2週群4.06%、3~4週群3.86%、5~6週群3.59%と非感染群に比べて有意に高かったが、7週以降群では1.49%と非感染群と同程度まで低下した()。

図. 調整後の術後30日死亡率

27659_fig01.jpg

Anaesthesia 2021年3月9日オンライン版

 年齢層(70歳以上と未満)、病状の重症度、手術の緊急性、手術のグレードの違いなどで層別化したサブグループ解析においても、こうした傾向は一貫していた。

 また、SARS-CoV-2陽性確認からCOVID-19の症状が7週以上持続した群(6.0%、95%CI 3.2~8.7%)では、症状の消失群(2.4%、同1.4~3.4%)および無症候群(1.3%、同0.6~2.0%)に比べ、術後30日死亡率が有意に高かった。

 今回の結果から、COVIDSurg Groupは「COVID-19患者の手術については、SARS-CoV-2陽性確認から少なくとも7週以上は延期すべき」と結論している。また、COVID-19の症状が持続している場合には、症状が消失するまで手術を延期することとした。その一方で「手術を遅らせるかどうかは、患者ごとに判断すべきである」と補足している。

(渕本 稔)