糖尿病患者では、心血管疾患(CVD)および若年死亡リスクが高まることが知られている。韓国・Sungkyunkwan University of MedicineのYou-Bin Lee氏らは、インスリン治療中の糖尿病患者におけるCVDや若年死亡などのリスクとの関連を検討した結果、死亡リスクが3倍になることなどが分かったとJ Diabetes Investig2021年3月4日オンライン版)に報告した。

40歳以上でCVD既往のない36万例を解析

 Lee氏らはこれまで、非糖尿病者に比べ2型糖尿病患者では心筋梗塞(MI)発症リスクが約42%、全死亡リスクが約51%高まることを報告している(Cardiovasc Diabetol 2019; 18: 157)。一方、実臨床においてはインスリン治療とこれらのリスクとの関連が指摘されているが、未解明な部分もあることから大規模後ろ向きコホート研究を実施した。

 対象は、韓国国民健康保険制度・全国サンプルコホート(NHIS-NSC)の2002〜15年のデータベースから抽出した、40歳以上でCVD既往がない非糖尿病および診断5年以内の糖尿病患者36万3,919例。非糖尿病の対照群(34万8,152例)、インスリン未治療の糖尿病患者(未治療群、1万4,397例)、インスリン治療による糖尿病患者(インスリン治療群、1,370例)に分類。2008年をベースラインとして2015年12月31日まで追跡し、MIや脳卒中の発症リスクおよび全死亡リスクについて検討を行った。

 ベースライン時の各群の主な背景は次の通り。平均年齢は対照群53.6歳、未治療群59.5歳、インスリン治療群60.3歳、65歳以上の割合はそれぞれ17.30%、33.61%、38.61%、男性は47.21%、55.64%、52.85%、Charison併存疾患指数は0.6、2.21、3.1といずれも有意な群間差は示されなかった。

インスリン治療群はMIおよび脳卒中リスクも2倍超

 平均7.8年の追跡期間中における全体のイベント発生件数はMI 5,275(対照群4,749、未治療群445、インスリン治療群81)件、脳卒中7,220(同6,437、673、110)件、死亡1万5,834(同1万4,290、1,226、318)件であった。

 年齢、性、月収、併存疾患を調整した多変量解析の結果、対照群に対するイベント発生リスクのハザード比(HR)は、MIが未治療群1.284(95%CI 1.159〜1.423)、インスリン治療群2.344(同1.870〜2.938)、脳卒中がそれぞれ1.435(同1.320〜1.561)、2.420(同1.993〜2.937)、全死亡が1.135(同1.067〜1.206)、3.037(同2.706〜3.407)と、いずれも有意なリスク上昇が確認された(全て傾向性のP<0.0001、図)

図. 対照群に対する全死亡発生リスク

27622_fig01.jpgDiabetes Investig 2021年3月4日オンライン版)

 以上の結果から、Lee氏らは「40歳以上を対象とした大規模後ろ向きコホート研究により、非糖尿病者に比べ5年以内に診断が付いた新規糖尿病患者はMI、脳卒中、全死亡のリスクがいずれも高く、インスリン治療を行っている場合はよりリスクが高まることが示唆された」と結論。「インスリン治療下の糖尿病患者におけるこれらのリスクが上昇した背景には、併存疾患やインスリン抵抗性、残存する膵β細胞機能、それに伴う血糖値の変動や上昇といった解析対象世代に特有の特徴があるのではないか」と付言している。

松浦庸夫