妊婦に禁忌とされる制吐薬のドンペリドン。国立成育医療研究センター妊娠と薬情報センターセンター長の村島温子氏らは、世界で初めて大規模データベースを用いた妊婦に対するドンペリドンの安全性を検討。解析の結果、妊娠初期の同薬服用による催奇形性は認められなかったと、J Obstet Gynaecol Res2021年2月25日オンライン版)に発表した。

妊婦の安全性に関する研究は不十分

 日本では一般的な制吐薬としてドンペリドンが用いられている。しかし動物実験により催奇形性が示されたことから、これまで妊婦には禁忌とされてきた。そのため、妊娠の自覚がなく同薬を服用した妊婦が、後から妊婦に禁忌の薬剤だと知り、妊娠の継続を悩むケースは少なくなかった。また、同薬は米国で販売されていないため、疫学研究も十分に行われているとは言い難く、妊娠中の安全性については根拠に乏しい面もあった。

 そこで村島氏らは、同センターおよび虎の門病院が保有する妊娠中の薬剤曝露に関するデータベースから、妊娠初期にドンペリドンを服用した519例(ドンペリドン群)、非催奇形性の薬剤のみを服用した1,673例(対照群)、制吐薬メトクロプラミドを服用した241例(メトクロプラミド群)を抽出し、ドンペリドンの催奇形性リスクを検討した。なお、年齢中央値は3群とも30歳だった。

奇形発生率はドンペリドン群で2.9%、対照群で1.7%

 検討の結果、奇形発生率はドンペリドン群で2.9%(14/485例、95%CI 1.6~4.8%)、対照群で1.7%(27/1,554例、同1.1~2.5%)、メトクロプラミド群で3.6%(8/224例、同1.6~6.9%)だった。

 アルコール摂取、喫煙、母親の年齢、妊娠初期の対照薬以外の併用薬の使用、処方施設、処方された年齢を調整後に解析したところ、ドンペリドン群と対照群では、奇形発生率に有意差は認められなかった〔調整後オッズ比(aOR)1.86、95%CI 0.73~4.70、P=0.191〕。同様に、メトクロプラミド群と対照群の比較でも、奇形発生率に有意差は認められなかった(aOR 2.20、同0.69~6.98、P=0.183)。

 村島氏らは「妊娠中にドンペリドンを服用しても胎児への影響はなく、安心して妊娠を継続することが可能だ」と結論。「大規模データベースを活用して同薬の催奇形性リスクを検討したのは、世界的にも今回が初めて。日本のみならず、ドンペリドンを使用している欧州やアジアを中心とした世界にとっても大きな成果といえるだろう」と付言した。

(比企野綾子)