米食品医薬品局(FDA)医薬品評価研究センター(CDER)のMarie C. Bradley氏らは、2型糖尿病を有する65歳以上のメディケア受給者57万例超を対象に、インスリン製剤による重症低血糖リスクを検討。その結果、中間型インスリン製剤の使用者と比べ、持効型インスリンアナログ製剤の使用者では重症低血糖リスクが約30%低かったとJAMA Intern Med2021年3月1日オンライン版)に発表した。

グラルギンで29%、デテミルで28%リスク低下

 これまでの研究で、2型糖尿病患者における重症低血糖リスクは、持効型インスリンと中間型インスリンで有意差がないとされている。しかし、低血糖リスクが高い65歳以上の高齢者や、実際にはよく見られる食前インスリン併用例を対象にした検討は行われていない。そこでBradley氏らは、メディケア受給者データを用いて高齢者における両インスリン製剤の重症低血糖リスクを検討した。

 対象は、2007年1月1日~19年7月31日に持効型インスリン(インスリングラルギン、インスリンデテミル)または中間型インスリンの使用を開始した2型糖尿病患者57万5,008例(平均年齢74.9歳、女性53%)。内訳は、インスリングラルギン群が40万7,018例、インスリンデテミル群が14万1,588例、中間型インスリン群が2万6,402例だった。主要評価項目は、低血糖による救急外来受診または入院の初発とした。

 解析の結果、中央値で0.37年の追跡期間における主要評価項目の発生は7,347例(インスリングラルギン群5,194例、インスリンデテミル群1,693例、中間型インスリン群460例)だった。

 傾向スコア調整後の主要評価項目の発生率は、中間型インスリン群と比べてインスリングラルギン群で29%〔調整後ハザード比(HR)0.71、95%CI 0.63~0.80〕、インスリンデテミル群で28%(同0.72、0.63~0.82)有意に低かった(ともにP<0.001)。

食前インスリン併用ではリスク低下せず

中間型インスリンと比較した持効型インスリンによる低血糖リスク低下効果は年齢によって変化し、69~87歳で他の年齢層と比べて効果量が大きかった。

 一方、食前インスリン併用の場合、中間型インスリン群に対する有意な低血糖リスク低下はインスリングラルギン群(HR 0.99、95%CI 0.90~1.09、P=0.85)、インスリンデテミル群(同0.96、0.86~1.08、P=0.53)ともに認められなかった。

 Bradley氏らは「救急外来受診または入院に至らない低血糖イベントは解析対象ではないため、低血糖発生率が過小評価されている可能性がある」と研究の限界を指摘。その上で「65歳以上の高齢2型糖尿病患者において、持効型インスリンは中間型インスリンと比べて重症低血糖リスクが低かった。ただし、食前インスリン併用例では、同様のリスク低下は認められなかった」と結論している。

(太田敦子)