がん研有明病院(東京都)血液腫瘍科部長の丸山大氏は、アストラゼネカが3月11日に開催したオンラインメディアセミナーで慢性リンパ性白血病(CLL)をテーマに講演。同社が今年(2021年)1月22日に再発・難治性CLLの適応で承認を取得したブルトンキナーゼ(BTK)阻害薬アカラブルチニブ(商品名カルケンス)について、「CLLの治療は長期に及ぶため、有効かつ安全性の高い治療法が望まれる。BTK阻害薬でも有害事象のプロファイルが異なり、既存の薬に比べてアカラブルチニブは標的に対する選択性が高く、有害事象を引き起こすリスクが少ないと考えられる」と述べた。

相次いで新薬登場も、いかに使いこなすかが課題

 CLLは白血球の一種であるリンパ球のうち成熟した小型のBリンパ球が悪性化し、がん化した細胞が無制限に増殖することで発症する。高齢者に多く、非常に緩徐な経過をたどる例が多いとされる。女性よりも男性に多いのが特徴。欧米では最も頻度の高い白血病だが、人種差があり、日本国内ではまれである。国内患者数は推定約2,000人で、高齢化に伴い患者は増加傾向にある。

 日本では2016年以降にCLLの新薬が相次いで登場し、治療が様変わりしている。現在、フルダラビンとシクロホスファミドにリツキシマブを併用するFCR療法、BTK阻害薬イブルチニブが標準治療とされている。この10年の間に抗CD20抗体オファツムマブ(2013年承認)、抗CD52抗体アレムツズマブ(2014年承認)、BTK阻害薬イブルチニブ(2016年承認)、BCL-2阻害薬ベネトクラクス(2019年承認)などが使用可能になり、治療体系が変化している。ただし、丸山氏は「国内の造血器腫瘍診療ガイドラインにおけるCLLの一次治療、二次治療では複数の治療選択肢がおおむね横並びに記載されている状況で、標準治療が十分には定まっていない。治療薬が増える中で、これらをどのように使っていくかはわれわれ臨床家に課せられた課題である」と指摘した。

主要評価項目のPFSが有意に改善

 アカラブルチニブは第一世代のBTK阻害薬イブルチニブに次ぐ、第二世代のBTK阻害薬。小リンパ球性リンパ腫(SLL)を含むCLLに対する適応の承認を取得している。

 BTKはT細胞以外の全ての造血細胞に発現するが、特にB細胞で発現し、B細胞の発生、分化、増殖、生存において極めて重要な役割を果たす。また、B細胞受容体(BCR)シグナル伝達経路の活性化が関与するが、アカラブルチニブはBTKに対して選択的かつ不可逆的に結合して機能を阻害し、抗腫瘍効果を発揮する。

 アカラブルチニブは海外第Ⅲ相試験ASCENDなどの結果を基に国内で承認を取得した。同試験は、再発または難治性のCLL患者310例を対象として、ベンダムスチンとリツキシマブの併用療法(BR群)またはidelalisib(国内未承認)とリツキシマブの併用療法(IdR群)とアカラブルチニブ群を比較、検討した。

 その結果、主要評価項目である独立評価委員会(IRC)評価による無増悪生存期間(PFS)について、IdR/BR群と比べてアカラブルチニブ群は有意な改善を示した(ハザード比0.31、95%CI 0.20~0.49、P<0.0001)。PFS中央値は、アカラブルチニブ群で未到達、対照群で16.5カ月であった。また、17p(17番染色体短腕)欠失、TP53変異、11q欠失、IGHV非変異のいずれかを有する高リスク患者におけるPFSを評価したところ、アカラブルチニブ群では明らかな延長が示された。

 アカラブルチニブ群で報告された主な有害事象は、頭痛(22.1%)、好中球減少症(19.5%)、下痢(18.2%)、咳嗽(14.9%)、発熱(12.3%)、疲労(9.7%)、悪心(7.1%)だった。BTK阻害薬の注目すべき副作用である心房細動は全グレードの発現率は、IdR群の3.4%、BR群の2.9%に対し、アカラブルチニブ群では5.2%。出血関連事象はそれぞれ、7.6%、5.7%、26.0%、高血圧は4.2%、0%、3.2%、二次性悪性腫瘍関連事象は2.5%、2.9%、11.7%だった。

2種類のBTK阻害薬の使い分けは?

 丸山氏はCLL治療について、「CLLは緩徐進行性の低悪性度腫瘍であり、適切な病状評価と治療選択が重要」と述べた上で、「初回治療としては、少なくともfit、17p欠失がない患者ではFCR療法、あらゆる患者にイブルチニブの投与が勧められる。BR療法は高齢かつ17p欠失がない患者への選択肢として考えられる」との考えを示した。

 さらに、BTK阻害薬の使い分けのポイントについての考えを提示。一次治療に関しては「多くの例で未治療患者に適応のあるイブルチニブを用いるケースが多くなる。比較的若年で予後不良因子がない患者ではFCR療法の選択が妥当だが、そうでない患者の多くはイブルチニブが選択されるだろう」とした。

 一方、再発例については「イブルチニブが奏効したにもかかわらず、毒性により投与を中止した例や、イブルチニブ投与から間隔が空いて治療を再開する場合にはベネトクラクスやアカラブルチニブといった選択肢があるが、比較的簡便に投与が始められるアカラブルチニブを用いることに妥当性はある」と述べた。なお、初発時にイブルチニブを投与して効果不十分な患者の二次治療にアカラブルチニブを用いることに関しては、「現時点では治療効果が得られたというデータはない。BTK阻害薬に治療抵抗性を示す場合はそれ以外の薬剤を選ぶことになる」と説明した。

(小沼紀子)