毎年3月30日の「世界双極性障害デー(World Bipolar Day)」の啓発イベントとして日本うつ病学会が主催する「世界双極性障害デー・フォーラム」(関連記事「"専門医"不足が深刻な双極性障害」)。昨年(2020年)はコロナ禍により中止となったが、今年は3月28日にウェブで開催される(関連記事「双極性障害が社会で認知されることを願う」)。参加費は無料。既に定員の300人を超える400人以上の応募があったため、募集人数の上限を増やして応募を受け付けている。同学会の双極性障害委員会委員長を務めてきた加藤忠史氏(順天堂大学精神医学講座主任教授/理化学研究所脳神経科学研究センター精神疾患動態研究チームチームリーダー)にメール取材し、同フォーラムの概要と狙いを聞いた。

妊産婦や就労に対する不安や悩みを解消へ

 同フォーラムではまず、加藤氏が理化学研究所で20年にわたり双極性障害の原因解明に取り組んできた軌跡や研究成果を紹介する講演を行う。同氏は「これまでの研究から、双極性障害の治療薬は病態に直接作用している可能性が示唆された。この疾患は、薬物療法と心理・社会的治療により多くの患者でコントロールが可能だが、中には病状が不安定で日常生活が困難な患者も存在する」と語る。こうした背景から、同氏らが中心となり気分障害センターの開設に至っている(関連記事『順天堂が「気分障害センター」設置』)。

 同氏に続いて、名古屋大学精神医学・親と子どもの心療学分野教授の尾崎紀夫氏が、双極性障害を抱える妊産婦や就労者の声を紹介する。さらに両氏と双極性障害当事者を交えたクロストークが行われる。妊娠や出産は可能なのか、就労は継続できるのかなど、新たに診断が付いた患者が抱える不安や悩みについて事例を紹介し、参加者からの質問にも可能な限り多く回答するという。加藤氏は「当事者が抱える不安や悩みの解消を目指したい」と話す。

 最後に、双極性障害に関する近年の動向についてコメントしてもらった。

加藤忠史氏のコメント

 昨年は、双極性障害の抑うつ症状への効果が期待できるルラシドンが承認され、新たな治療選択肢が加わった。これまで双極性障害の維持療法の適応を持つ薬剤はラモトリギンのみだったが、保険適用は躁病ではあるものの、第一選択とされる炭酸リチウムが広く使われている。炭酸リチウムは副作用が出現しやすいため、定期的な血中濃度の測定が必要である。ラモトリギンは、スティーブンス・ジョンソン症候群の発症リスクを回避するため、少量から漸増する必要があり、処方には注意を要する。これらの薬剤の処方例においては、リチウム血中濃度を適切に測定していなかったり、ラモトリギンの漸増法が添付文書に従っていなかったりすることで、医薬品副作用被害救済制度の適用が受けられないケースが少なくない。こうした点に留意してほしい。昨年、アリピプラゾール(持続性水懸筋注用)の適応に双極性障害における気分エピソードの再発・再燃抑制が追加され、双極性障害の維持療法に新たな選択肢が加わった点も大きなトピックである。

松浦庸夫