肉類の摂取とがんとの関連については知られているが、がん以外の疾患リスクとの関係については限定的だ。そこで英・University of OxfordのKaren Papier氏らは、同国のUK Biobank研究の登録データを用いて肉の摂取と生活習慣病などの一般的な疾患リスクとの関連を検討。結果をBMC Med2021; 19: 53)に報告した。

中年層47万人超のデータを解析

 赤身肉や加工肉の摂取量が多いほど大腸がんリスクが高まることなどから、世界保健機関をはじめ多くの国はそれらの摂取量を抑えることを推奨しているとPapier氏ら。しかし、がん以外の疾患リスクについての報告は限定的であるとして、Papier氏らは肉類の摂取と一般的な25の疾患との関連について検討を行った。

 対象は、UK Biobank研究に2006〜10年に登録された中年男女のうち、ベースライン時の肉の摂取量、入院および死亡に関する情報が得られた47万4,985人。肉の摂取については、食生活に関する29項目の質問に含まれる5項目から情報を抽出した。

 具体的には加工牛肉、未加工ラム・マトン肉、未加工豚肉、未加工鶏肉、加工肉について摂取頻度(0=0回/週、0.5=1回未満/週、1=1回/週、3=2〜4回/週、5.5=5〜6回/週、7=1回以上/日)を評価。1週間当たりの摂取量別に0〜1回群、2回群、3〜4回群、5回以上群―の4群に分けた。いずれの群も平均年齢は55〜57歳だった。

 疾患リスクに関しては、次の通り。循環器系〔虚血性心疾患、心房細動・粗動、脳血管疾患(虚血性または出血性脳卒中)、静脈血栓症、静脈瘤、痔核〕、呼吸器系(肺炎)、消化器系(胃食道逆流症、胃炎・十二指腸炎、鼠径ヘルニア、非感染性腸炎・大腸炎、憩室疾患、結腸ポリープ、胆のう疾患)、関節系(変形性関節症)、泌尿器系(腎結石、尿路感染症、前立腺肥大症、女性の性器脱)、その他(子宮筋腫、鉄欠乏性貧血症、糖尿病、手根管症候群、白内障、蜂巣炎)。

多量摂取で心疾患や糖尿病リスクが上昇、貧血リスクは低下

 47万4,985人のうち、3分の1近くが未加工肉や加工肉を1日1回以上摂取していた。それらの日常的(3〜4回/週)な摂取者の特徴として男性、比較的高齢、欧州系白人、退職者、BMI髙値、喫煙および飲酒の習慣あり、果物や野菜の摂取が少ないなどが挙げられた。

 Cox比例ハザード回帰モデルを用いて、肉の摂取量と25疾患の発症リスクを検討した。その結果、未加工肉および加工肉の多量摂取では、摂取量が1日当たり70g増えるごとに虚血性心疾患〔ハザード比(HR)1.15、95%CI 1.07〜1.23〕、肺炎(同1.31、1.18〜1.44)、憩室疾患(同1.19、1.11〜1.28)、結腸ポリープ(同1.10、1.06〜1.15)、糖尿病(同1.30、1.20〜1.42)の発症リスクが有意に上昇することが示された(いずれも傾向性のP<0.001)。未加工肉と加工肉を個別に検討しても同様の結果であった。

 一方、未加工肉の多量摂取では、摂取量が1日当たり50g増えるごとに鉄欠乏性貧血症(HR 0.80、0.72〜0.90、傾向性のP<0.001)発症リスクが有意に低下した。鶏肉の多量摂取でも、摂取量が1日当たり50g増えるごとに鉄欠乏性貧血症の発症リスク(同0.83、0.76〜0.90)は有意な低下が確認されたが、摂取量が1日当たり30g増えるごとに胃食道逆流症(同1.17、1.09〜1.26)や糖尿病(1.14、1.07〜1.21)などの発症リスクは有意な上昇が認められた(いずれも傾向性のP<0.001)。

 以上の結果を受けて、Papier氏らは「大規模前向きコホート研究のデータから未加工肉、加工肉、鶏肉の多量摂取により幾つかの疾患の発症リスクが高まることが明らかになった。一方、未加工肉および鶏肉の摂取量が多い者では鉄欠乏性貧血症の発症リスクが低下していた」と結論。「高リスクの主な要因としてBMI高値が考えられるが、BMIおよびウエスト周囲長を補正後もリスクの上昇が認められたため、肥満による別の側面が影響を及ぼしている可能性がある」と付言し、さらなる研究の必要性を訴えている。

松浦庸夫