服用に伴う筋症状への懸念から、スタチンの使用を中断する患者は少なくない。こうした中、英・London School of Hygiene and Tropical MedicineのEmily Herrett氏らは、使用中の筋症状発現を理由にスタチンを中止した患者および中止を検討中の患者200例を対象に、筋症状に及ぼす影響をスタチンとプラセボで比較するランダム化プラセボ対照単一被験者(n-of-1)試験を実施。スタチンによる筋症状への有意な影響は認められなかったとの結果をBMJ2021; 372: n135)に発表した。

筋症状との関連を示すデータが不足

 スタチンは、心血管疾患の初発および再発予防に広く使用されている。これまで、同薬の安全性についてはランダム化比較試験(RCT)のメタ解析(Lancet 2016; 388: 2532-2561)などで確立されており、横紋筋融解症などの重篤な筋有害事象も極めてまれであることが示されている。

 一方、より軽度の筋症状については明確なデータがないが、非盲検下で実施された観察研究やメディア報道でスタチンが筋肉痛の原因となりうるとの指摘がなされたことなどを受け、同薬の使用を中断する患者は少なくない(関連記事「スタチンの筋有害事象に対策基準示される」)。

 そこでHerrett氏らは今回、スタチン使用中に筋症状を訴えた患者を対象にランダム化プラセボ対照n-of-1試験(単一被験者に対する複数の介入の効果を検証する試験)を実施。全ての試験データを集計し、スタチンが筋症状に及ぼす全般的な影響について検証した。

試験完遂した患者の66%がスタチン再開

 対象は、2016年12月~18年4月にイングランドおよびウェールズのプライマリケア医療機関50施設で登録した、スタチン使用中の筋症状を理由に同薬を中止した患者および中止を検討中の患者200例(平均年齢69.1歳、男性58%)。

 試験期間は1年間で、スタチン(アトルバスタチン20mg/日)またはプラセボを2カ月間投与する介入をそれぞれ3回ずつ、計6回にわたりランダムに決めた順序で行った。主要評価項目は、Visual Analogue Scale (VAS)で評価した筋症状(筋肉痛、筋力の低下、圧痛、こわばりなど)スコアとした。

 主解析にはスタチン投与期間とプラセボ投与期間に、それぞれ1回以上筋症状スコアのデータが得られた151例を組み入れた。その結果、スタチン投与期間とプラセボ投与期間で筋症状スコアに差は認められなかった(プラセボ投与期間と比べたスタチン投与期間におけるスコアの差平均値:-0.11、95%CI -0.36~0.14、P=0.40)。筋症状を理由とした試験脱落率は、スタチン投与期間で9%、プラセボ投与期間で7%だった。

 また、1年間の試験を完遂した113例中74例(66%)がスタチンの使用を既に再開しているか、再開する予定であると回答した。

 以上を踏まえ、Herrett氏らは「スタチン使用時に筋症状を報告していた集団において、スタチンとプラセボで筋症状の頻度や重症度に差はなく、スタチンの全般的な影響は認められなかった。また、試験完遂例の3分の2がスタチン療法を再開する意思を示していた」と結論。さらに、「n-of-1試験は集団レベルで薬剤の影響が評価でき、個々の治療における判断を助ける有用な情報が得られる」と述べている。

(岬りり子)