これまでに、若年期の注意欠陥・多動性障害(ADHD)と将来の精神疾患との関連を示唆する研究結果は複数示されているが、まだ明確には証明されていない。フランス・Service Hospitalo-Universitaire de Pharmacotoxicologie de LyonのMikaïl Nourredine氏らは、若年期ADHDがその後の精神疾患リスクに及ぼす影響を検討するため、12件(計185万人)を対象にシステマチックレビューおよびメタ解析を実施。その結果、若年期にADHDであった場合はそうでない場合と比べて、将来の精神疾患のリスクが高いことが分かったとJAMA Psychiatry2021年2月24日オンライン版)に報告した。

小児・若年者の5%、成人の2.5%がADHD

 ADHDは一般的に若年期に発症し、注意欠如や多動性、衝動性を特徴とする発達障害である。世界中で小児と若年者で5%、成人で2.5%に影響を及ぼしており、発達障害、境界性パーソナリティ障害、行動または気分障害、精神疾患など他の障害や疾患と関連しているケースが多い。

 最近では、若年期のADHDとその後の精神疾患との関連を裏付けるさまざまなエビデンスが報告されている。ADHDと精神疾患は注意欠如、ドパミン作動系の不安定、遺伝的感受性などの生理病理学的特徴に共通点がある。しかし、疫学研究の結果には相反するものがあり、両者の関連が明確に分かっているわけではない。

 Nourredine氏らは今回、ADHDと将来の精神疾患リスクとの関連に関する現在のエビデンスを定量的に統合することを目的に、12件の研究(計185万人)を対象にシステマチックレビューおよびメタ解析を実施した。

 MEDLINE、Scopus、PsycInfo、Web of Scienceデータベースで、2020年7月7日の最終分析まで体系的に文献を検索。選択対象は、18歳までにADHDと診断された人が精神疾患を発症する相対リスクを同疾患のない対照者と比較したコホート研究および症例対照研究とした。

 システマチックレビューとメタ解析(PRISMA)および疫学における観察研究のメタ分析(MOOSE)ガイドラインの優先報告項目に基づきデータの抽出と統合を実施。Newcastle-Ottawa Scaleを用いて個々の研究のバイアスのリスクを評価した。調整オッズ比またはハザード比を抽出し、調整されていない場合はオッズ比を算出した。変量効果モデルを用いて統合相対リスクを算出した。

 主要評価項目はADHDと精神疾患との関連とし、いずれも国際分類に基づいて評価した。

有病率は対照群0〜4.2%、ADHD群0.7〜12.5%、相対効果4.74

 検討の結果、15件の研究がレビューの対象となり、メタ解析では12件の研究185万人(ADHD群172万5,760人、対照群12万4,095人)のデータを統合した。コホート研究における精神疾患の有病率は全人口で0.4〜6.4%(中央値1.1%、四分位範囲0.8〜1.8%)、対照群では0〜4.2%(同0.5%、0〜1.2%)、ADHD群では0.7〜12.5%(同2.7%、2.0〜3.2%)だった。若年期に診断されたADHDはその後の精神疾患リスクの増加と有意に関連しており、統合相対効果は4.74(95%CI 4.11〜5.46、I2=43%、95%CI 0〜70%)だった。

 サブグループ解析では、アウトカム〔精神疾患(オッズ比 5.04、95%CI 4.36〜5.83)、統合失調症(同4.59、同3.83〜5.50)〕、研究デザイン〔コホート研究(同4.64、同4.04〜5.34)、症例対照研究(同6.81、同4.21〜11.03)〕、および調整済み(同4.72、同4.11〜5.46)、未調整(同3.81、同1.39〜10.49)の推定値を用いたが、グループ間で有意差はなかった。性とバイアススコアを共変量とした回帰分析でも有意差はなかった。

 今回の研究について、Nourredine氏らは「若年期のADHDがその後の精神疾患リスクの上昇と関連していることが示唆された」と結論。「両者に共通するメカニズムの解明や、ADHDへの早期介入が後の精神疾患リスクを軽減するかどうかを明らかにするには、さらなる研究が必要である」と付言している。

(今手麻衣)