新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬として、国内でも医師主導型治験が進行中の抗寄生虫薬イベルメクチンについて、軽症患者の回復を早める効果に乏しいことが示された。コロンビア・Centro de Estudios en Infectologia PediatricaのEduardo Lopez-Medina氏らは、有症状の軽症COVID-19成人患者476例を対象としたプラセボ対照二重盲検ランダム化比較試験(RCT)の結果、症状軽快までの期間の中央値は、イベルメクチン群(300μg/kg/日を5日間投与)で10日、プラセボ群で12日と有意差がなかったことをJAMA2021年3月4日オンライン版)に発表した。

感染初期のウイルス抑制効果を検証

 抗ウイルス活性作用および抗炎症作用を有し、忍容性が良好なイベルメクチンは、in vitroおよび動物モデルで抗新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)活性を示したことから、臨床効果は不確実ではあるもののCOVID-19治療薬として広く処方されている。

 ウイルス複製は、COVID-19発症初期に特に活発である可能性があり、イベルメクチンはデング熱、日本脳炎など初期における抗ウイルス活性が実験的に確認されている(J Antimicrob Chemother 2012; 67: 1884-1894)。そこで、Lopez-Medina氏らは、コロンビアの単施設で二重盲検RCTを実施し、感染初期のイベルメクチン投与がCOVID-19患者の回復を早めるかどうかを検討した。

症状出現から7日以内の軽症成人が対象

 Lopez-Medina氏らは、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)検査または抗原検査で確認されたCOVID-19患者の保健データベースから、有症状の軽症成人例(在宅療養または入院)を抽出。組み入れ基準は登録前7日以内の症状発現とし、妊娠・授乳中の女性、無症候者、重度の肺炎症状を有する者、登録前5日以内のイベルメクチン服用者は除外した。

 2020年7月15日~11月30日に476例を登録し、イベルメクチン群(0.6%液剤、300μg/kg/日)とプラセボ群に1:1でランダムに割り付け、5日間経口投与。2020年12月21日まで追跡した。

 主要評価項目は、21日の追跡期間中に症状が軽快(8点順序尺度でスコア0)するまでの期間とした。

症状改善までの期間や新規入院に差なし

 一次解析対象は、2020年9月29日~10月15日に登録した75例(ラベリングミスにより全例にイベルメクチンを投与)とランダム化後に組み入れ基準違反が判明した3例の計78例を除外した398例(イベルメクチン群200例、プラセボ群198例)。年齢中央値は37歳〔四分位範囲(IQR)29~48歳〕、女性が58%、基礎疾患がなかったのは79%だった。

 ベースライン時の症状は筋肉痛(78%)や頭痛(77%)が最多で、次いで嗅覚・味覚障害(50~56%)および咳(53%)が多かった。

 Kaplan-Meier法で評価した症状改善までの期間中央値は、プラセボ群の12日(IQR 9~13日)に対しイベルメクチン群では10日(同9~13日)と有意差はなかった(ハザード比1.07、95%CI 0.87〜1.32、P=0.53、log-rank検定)。21日目までにイベルメクチン群の82%、プラセボ群の79%で症状の改善が見られた()。

図. 症状が軽快するまでの期間

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JAMA 2021年3月4日オンライン版

 イベルメクチン群とプラセボ群で、より高度な治療(新規の入院または24時間以上の酸素投与)を要した割合はそれぞれ2%、5%と有意差はなく、ランダム化後中央値3.25時間で入院した4例を除外した事後解析でも両群に有意差はなかった。

有害事象による治験中止は7.5%

 21日間に報告された有害事象(AE)は、イベルメクチン群とプラセボ群でそれぞれ154例(77%)、161例(81.3%)。頭痛が最も多く、104例(52%)、111例(56%)だった。イベルメクチン群で15例(7.5%)、プラセボ群で5例(2.5%)がAEのため試験を中止した。重篤なAE(多臓器不全)が両群で各2例発生したが、試験薬との関連は認められなかった。

重症化予防効果の検証は不十分

 Lopez-Medina氏らは「成人の軽症COVID-19患者に対するイベルメクチンの5日間投与は、プラセボに比べて症状軽快までの期間を有意に短縮しなかった。今回の結果は、軽症COVID-19の治療薬としてのイベルメクチン使用を支持しないが、他の臨床転帰に対する同薬の有効性を検討するには、より大規模な試験が必要と考えられる」と結論している。

 また研究の限界として、「対象集団が比較的若年であったため、高齢者集団では結果が異なる可能性がある。加えて、COVID-19治療薬としてのイベルメクチンに関する他のRCTの予備報告について、査読がある医学誌で発表されたものはない」と述べ、イベルメクチンのCOVID-19の重症予防効果を検証する必要性を指摘している。

(坂田真子)