厚生労働省は昨日(3月9日)、国内で新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチンの接種を受けた医療従事者において、同日までにアナフィラキシーが17例で発生したと報告した。このうち、約半数に食物や医薬品によるアレルギーの既往歴があり、喘息や高血圧といった基礎疾患のある例もいた。全例が回復、軽快したが、一部の症例では投薬で症状が改善しても、再び症状が出現したことから、専門家は「改善した後も十分な注意が必要」と呼びかけている。また、ワクチン接種に当たっては接種前にアレルギー関連疾患や症状の既往歴の十分な確認が重要だとしている。

アナフィラキシー発生の全例が女性

 厚労省によると、昨日までに国内でSARS-CoV-2ワクチンを接種したのは10万7,558例。アナフィラキシーの発現が報告されたのは20~50歳代の女性17例で、発現率を換算すると0.016%。このうち食物や医薬品によるアレルギーの既往歴が8例、動物によるアレルギーの既往歴、食物、動物、殺虫剤によるアナフィラキシーの既往歴が各1例で、基礎疾患は喘息が3例、高血圧が2例であった。

 医療機関からの報告によると、17例のうち評価不能または不明と判断された2例を除く15例が「接種との関連あり」と評価された。17例中15例は投薬後に改善し、2例は投薬なしで軽快した。ただし、アナフィラキシー発現後に投薬した1例(喉の違和感、体幹と両腕の蕁麻疹、咳、息苦しさ)は治療でいったん症状が回復したものの、喉の違和感が再度現れたことから入院に至った。厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会長で東京医科歯科大教授森尾友宏氏は、「一部の症例では投薬などで初期症状が安定しても、再度アナフィラキシー症状が出現することがある。改善した後も十分な注意が必要だ」とのコメントを発表している。

 現時点でアナフィラキシー発現例は全て女性だが、これは日本感染症学会が2月26日に公開した『 COVID-19ワクチンに関する提言(第 2 版)』で、「ファイザーやモデルナのメッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンを接種後のアナフィラキシーの発生例の94.5%を女性が占めた」とする米国の調査結果と概ね合致する。同氏は「全例が女性だがアナフィラキシーに該当するかを含めて個々の症例の詳細を評価する必要がある」と指摘している。

約6割が接種後15分以内に症状出現

 日本感染症学会の提言では、アナフィラキシーの原因としてmRNAワクチンが人体に入った際に分解を防ぐために使われている脂質ナノ粒子(LNP)表面のポリエチレングリコール(PEG)が挙げられており、「PEGを使用している薬剤や化粧品に対するアレルギーの既往を持つ人では特に注意が必要」と明記している。実際にSARS-CoV-2ワクチン接種後のアナフィラキシー発現例の約半数で食物や医薬品によるアレルギーの既往歴が確認されたことからも、こうした背景を持つ人への接種時には引き続き注意が必要だ。

 アナフィラキシー発現例で報告された症状出現のタイミングは、接種後5分または5分以内が5例、接種後5分以降~15分が5例で、6割近くは接種から15分以内の比較的早期に見られた。残る7例は、接種後25分~30分が2例、接種後30分以内が3例、記載なしが2例だった。

 薬事・食品衛生審議会薬事分科会医薬品等安全対策部会安全対策調査会長で埼玉県立小児医療センター病院長の岡明氏は、接種30分時点でアナフィラキシー症状が出現した例もいたことから、「既往歴がある場合には、接種医や被接種者への十分な情報提供が重要である。接種者数を確認した上でわが国での頻度や適切な医療準備体制について、厚労省の審議会で議論していく必要がある」との見解を示している。

接種前にアレルギー関連疾患や症状の既往歴について十分確認を

 今回報告された症状は、咳、呼吸が早くなる、まぶたの腫れ、全身の痒み、発熱、息苦しさ、喉の違和感・痛み、冷や汗、気分不良・不快感・吐き気、熱感、末梢冷感、鼻汁、手足の痺れ、蕁麻疹、倦怠感、顔のむくみ、発赤・発疹、腹痛・下痢、皮疹など多岐にわたっていた。

 岡氏は「接種後になんらかの事象が生じた場合に、適切な医療の提供ができるよう整備することが重要。アレルギー関連疾患や症状の既往を事前に把握するためにも、十分な既往歴の確認が重要である」と注意を促している。

 国内ではアナフィラキシーの発現事例が蓄積されつつあるため、厚労省の審議会で取りまとめ、共通する背景や対応方法などについても評価・検討を行う方針という。

(小沼紀子)