日本救急医学会は2月24日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行の第一波における救急科医の労務実態アンケート(2020年5月末時点)の結果を公表。回答が得られた全国の救命救急センター/日本救急医学会指導医指定施設180施設(10万2,578床)のうち、15%が集中治療室(ICU)をCOVID-19患者専用のユニットに転換しており、56%がN95マスクの2日以上継続使用を余儀なくされていた実態が明らかとなった。結果の詳細はAcute Med Surg2020; 7: e5922020; 7: e614)に公開されている。

6割超の病院でCOVID-19専用病棟を設置

 COVID-19第一波への対応により、救急科医の労務状況は深刻な影響を受けた。今回のアンケートは、第一波をどのように乗り切ったかを記録することを目的に実施された。回答期間は6月8~27日だった。

 COVID-19の重症度については、酸素投与が必要な患者を中等症、人工呼吸器/体外式膜型人工肺(ECMO)の使用またはICUでの管理が必要な患者を重症と定義した。

 4,938例のCOVID-19入院患者が報告され、軽症~中等症の3,838例のうち、62例が死亡、259例が重症化し、392例が入院中だった。重症の1,100例のうち138例が死亡、112例が入院中だった。COVID-19による死亡率は全入院患者で4.1%、重症患者で12.5%だった。

 中等症患者の入院に当たり、既存の感染症病棟をCOVID-19患者専用に転換した医療機関は45施設(25%)、一般病棟をCOVID-19専用としたのは66施設(37%)、入院受け入れ不能は11施設(6%)だった。

 重症患者の治療のため、27施設(15%)がICUをCOVID-19患者専用のユニットに転換し、1,100例中353例(32%)を受け入れていた。一方、107施設(59%)がICUの一部をCOVID-19患者用に運用しており、ICUだけでなく高度治療室(HCU)、旧病棟などを専門のケアユニットに再編成したり、臨時ユニットを設置したりする施設も見られた。

N95マスクの不足が最も顕著

 患者ごとに個人防護具(PPE)を交換できた医療機関は限られており、N95マスクの不足が最も顕著だった。患者ごとにN95マスクを交換できたのは30施設(17%)にとどまり、1日1回交換できたのは49施設(27.2%)、2日以上継続使用していたのは101施設(56%)に上っていた()。

図. PPEの交換頻度

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Acute Med Surg 2020; 7: e592

 その他、プラスチックガウンが112施設(62%)で、サージカルガウンが74施設(41%)で、ゴーグルが72施設(40%)で、アルコールベースの手指消毒薬が65施設(36%)で不足していた。

 N95マスクやサージカルマスクなどPPEの品質への懸念や、ビデオ喉頭鏡用のバッテリーが不足していたという回答もあった。

 また、入院診療で困難を感じる点として、重症患者のリハビリテーション導入・進行と回答した施設は42%、回復期患者においても28%が困難を感じていた。重症患者の長期経過(36%)、不明確な隔離基準(34%)と合わせて、ICUの病床占拠率を押し上げているとの回答があった。

積極的なメンタルヘルス対応を

 救急科医の残業時間は4割の施設で増加しており、月100時間以上の時間外診療があった施設も1割程度見られた。

 中等症までの入院患者が5例以上、あるいは重症入院患者が1例以上いる施設ではそれ以外の施設に比べて、「濃厚接触のリスクが高い」と回答した割合が有意に多かった(P<0.05)。8割以上の施設の救急科医は自身や家族への感染リスクに懸念があり、半数以上の病院では、職員の健康管理の困難さや医療資材の不足を経験していた。また、救急科と施設、あるいは他科との間でCOVID-19診療に対する考え方の違いがあることにストレスを感じていたという回答が約3分の1見られた。

 COVID-19患者の診療に従事する医療スタッフに対する施設側の対応として、希望者への宿泊場所を提供したのは106施設(59%)で、入院患者が多い医療機関で割合が高かった。休暇取得や託児所の利用が可能な医療機関はそれぞれ31施設(17%)、41施設(23%)だった。

 メンタルヘルスチェックや相談体制が整備されていた143施設(79%)のうち、26施設(18%)が精神的不調を訴える医師が見られたと回答。一方、それらが整備されていない37施設(21%)で、精神的不調を訴える医師が見られたと回答したのは1病院のみで、精神的不調に悩む医療スタッフを見逃している可能性が示唆された。

(渕本 稔)