変形性膝関節症(膝OA)のガイドライン(GL)では、筋力トレーニングの実施が推奨されている。しかし、高強度のトレーニングが低強度のトレーニングや生活指導(attention control)よりも症状の改善に有効であるかは明らかでなかった。米・Wake Forest UniversityのStephen P. Messier氏らは、変形性膝関節症患者377人を対象とした研究の結果、高強度のトレーニングと低強度のトレーニングや生活指導に有効性の差は確認されなかったとJAMA2021; 325: 646-657)。

平均年齢65歳の膝OA患者377人が参加

 膝OAは関節炎の最も一般的な病態で、成人の関節障害の主な原因である。大腿筋の衰弱が膝の痛みやOAの進行に関連しており、OAの臨床GLでも従来の研究のエビデンスに基づき筋力トレーニングを推奨している。

 Messier氏らは、膝OA患者において、高強度の筋力トレーニングが低強度の筋力トレーニングや生活指導との比較により、膝の痛みや膝関節の圧迫力を軽減するかどうかを調べる目的で、評価者盲検ランダム化比較試験を行った。

 参加者は、BMIが20〜45で膝に痛みがあり、X線所見で膝OAが確認された地域在住の377人〔平均年齢65歳、女性151例(40%)〕で、高強度筋力トレーニング群(127例)、低強度筋力トレーニング群(126例)、生活指導群(124例)にランダムに割り付けた。2012年7月~16年2月に登録を行い、2017年9月まで追跡した。

 筋力トレーニングは週3回、18カ月間実施した。基本技術を指導する最初の4回のセッションの後、参加者が持ち上げることができる最大重量を測定し(1RMテスト)、開始時の負荷を決めた。下半身のトレーニングはレッグカール、レッグプレスなど6種、上半身では4種のトレーニングを行った。

 高強度群では、まず1RMの75%で2週間1セット8回で各運動を3セット行い、3~4週目は1RMの80%に引き上げた。5~6週目は1RMの85%で6回、7~8週目は1RMの90%で4回とした。9週目に1RMテストを再度実施し、この9週間のサイクルを繰り返した。

 一方、低強度群では高強度群と同様に9週間のサイクルで運動を行ったが、1RMの30〜40%で15回を3セット実施した。

 生活指導群では、最初の6カ月は隔週で60分間のグ膝のケアや栄養補給に関するループワークショップに参加し、以降は月に1回参加した。

高強度群と低強度群との間で膝の痛み、膝関節圧迫力のいずれも有意差なし

 主要評価項目は、OAの健康関連QOLにおける疾患特異的尺度であるWestern Ontario and McMaster Universities Osteoarthritis Index(WOMAC)を用いた膝の痛みスコア〔0(最善)~20(最悪)、臨床的に必要な最小変化量(MCID)は2〕と歩行中の膝関節の圧迫力(MCIDは不明)とした。

 試験を完了した320例の調整後平均WOMAC痛みスコアは、高強度群と生活指導群および高強度群と低強度群の間でいずれも有意差はなかった(それぞれ5.1 vs. 4.9、調整後群間差0.2、95%CI -0.6〜1.1、P=0.61、5.1 vs. 4.4、同0.7、0.1〜1.6、P=0.08)。

 また膝関節圧迫力の平均値においても、高強度群と注意制御群および高強度群と低強度群の間で有意差はなかった(それぞれ2453N vs. 2512N、調整後群間差−58N、95%CI −282〜165N、P=0.61、2453N vs. 2475N、同−21N、−235〜193N、P=0.85)。

 重篤でない有害事象が87件(高強度群53件、低強度群30件、生活指導群4件)、研究に無関係の重篤な有害事象は13件(それぞれ5件、3件、5件)だった。

 以上から、Messier氏は「膝OA患者において、低強度筋力トレーニングや生活指導と比べ、高強度筋力トレーニングでは、18カ月経過時点の膝の痛みや膝関節の圧迫力が大幅に軽減されることはなかった」と結論。「今回の結果は、成人膝OA患者に対し、低強度筋力トレーニングまたは生活指導よりも高強度筋力トレーニングを優先することを支持しないものである」と述べている。

(今手麻衣)