サルコペニアは高齢者の活動性を低下させる要因の1つで、転倒や要介護など日常生活に多大な影響を及ぼしうる。東京都健康長寿医療センター研究所研究部長の北村明彦氏らは、わが国の高齢者におけるサルコペニアの実態を明らかにするため追跡研究を実施。その結果、サルコペニアの有病率は加齢とともに上昇し、サルコペニアによる死亡および要介護リスクが約2倍になることが明らかになったと、J Cachexia Sarcopenia Muscle2021; 12: 30-38)に発表した。

1,800人超を5.8年間追跡

 サルコペニアの研究は欧米諸国を中心に行われており、欧米人に比べ筋肉量が少ない日本人を対象としたものは少ない。また、サルコペニアの有病率、関連因子、死亡および要介護リスクを同時に検討した研究は世界的にもほとんどない。

 北村氏らは、日本人を対象としたコホート研究を実施し、日本の高齢者におけるサルコペニアの実態とリスクなどについて検討した。対象は、群馬県または埼玉県に住む65歳以上の高齢者で、健康診断を受けた1,851人(平均年齢72±5.9歳、女性50.5%)。平均追跡期間は5.8年だった。

 サルコペニアの定義は、アジア人向け診断基準(Asian Working Group for Sarcopenia;AWGS)2019に基づき、①四肢骨格筋指数が男性7.0kg/m2未満、女性5.7kg/m2未満に加え、②握力低値(男性28kg未満、女性18kg未満)または歩行速度低値(男女とも1m/秒未満)―が認められる場合とした。また、①または②のいずれかを満たす場合をサルコペニア予備軍とした。

男女とも認知機能低下がサルコペニアに関連

 検討の結果、サルコペニアの有病率は男性が11.5%、女性が16.7%だった。年齢別に見ると、75~79歳では男性が21.5%、女性が22.9%、80歳以上ではそれぞれ32.4%、47.7%と加齢に伴い上昇していた。

 サルコペニアに関連する年齢以外の因子を検討したところ、男性では血中アルブミン低値、認知機能の低下、身体活動量の減少、1年以内の入院の増加(全てP<0.05)、女性では認知機能の低下(P=0.004)、抑うつ症状の出現(P<0.001)が抽出された。

全死亡リスク2倍強、要介護リスク1.5倍超

 次に、全死亡および要介護の発生リスクを検討した。その結果、全死亡リスクは男女とも非サルコペニア群に比べサルコペニア群で有意に高かった〔男性:ハザード比(HR)2.0、95%CI 1.2~3.5、P<0.01、女性:同2.3、1.1~4.9、P<0.05〕。同様に、要介護の発生リスクも高い傾向が見られた(男性:同1.6、1.0~2.7、P<0.1、女性:1.7、1.1~2.7、P<0.05)。

 一方、サルコペニア予備軍と非サルコペニア群で、全死亡リスク、要介護の発生リスクに有意差は認められなかった。この点について、北村氏らは「性差や基礎疾患、若年期から高齢期にかけての筋肉量や筋力の変化の度合いが影響した可能性があり、今後の検討課題である」との見解を示している。

 以上を踏まえ、同氏らは「高齢期のサルコペニアを早期に発見し、運動や栄養などの生活習慣の改善により進行を食い止めることは、健康寿命の延伸につながる。筋肉量や筋力を評価し、サルコペニアの予防と改善を図っていくことが重要だ」と結論している。

(比企野綾子)