感染性因子への曝露は、異常な免疫反応を惹起して非感染性のぶどう膜炎発症に寄与しうることが実験的研究で示されているが、具体的な病原体に関する十分なデータは存在しない。中国・First Affiliated Hospital of Chongqing Medical UniversityのZhenyu Zhong氏ら※1は、結核菌に焦点を当て中国と日本のコホート研究における遺伝子データを解析した結果、結核がベーチェット病の危険因子であることが示されたとJAMA Ophthalmol2021年2月18日オンライン版)に報告した。

メンデルランダム化解析で関連を検討

 結核は、世界人口の約25%が潜在性結核感染者とされる最大の感染症で、感染により免疫異常が惹起される可能性が示唆されている。一方で、免疫疾患におけるステロイドや免疫抑制薬、生物学的製剤の使用は結核感染・再燃リスクを高める可能性もある。観察研究ではバイアスのため両者の関連を正確に特定できず、ランダム化試験の実施は倫理的に許容されない。

 そこでZhong氏らは、中国と日本のゲノムワイド関連研究(GWAS)データのメンデルランダム化解析を実施。結核に直接関連する遺伝子バリアント※2 とベーチェット病関連のぶどう膜炎、およびその他の非感染性ぶどう膜炎(Vogt-小柳-原田病関連、強直性脊椎炎関連、Fuchsぶどう膜炎)との関連を検討した。

 主要評価項目として、遺伝的な結核易感染性によるベーチェット病の発症オッズ比(OR)を逆分散法により求めた。さらに、潜在性結核感染症の診断検査T-SPOT.TBを用いた前向き観察研究を実施し、ベーチェット病患者と対照群で検査陽性率を比較した。

易感染性2倍でベーチェット病リスクは1.26上昇

 中国コホート(女性41.7%、平均年齢35.4±12.5歳)の内訳は、ベーチェット病関連ぶどう膜炎999例、その他のぶどう膜炎1,585例、対照群4,417例であった。日本コホート(同41.8%、39.1±12.7歳)の内訳は、ベーチェット病群611例、対照群737例、T-SPOT.TBはベーチェット病群116例と対照群121例に実施された。

 結核に対する遺伝的な易感染性はベーチェット病リスクの上昇と関連しており、中国コホートでは易感染性が2倍になるごとにベーチェット病の発症ORは1.26(95%CI 1.12~1.43、P=1.47×10−4)上昇した。日本コホートでも同様の結果が得られた(OR 1.16、95%CI 1.08~1.26、P=9.13×10−5)。

 T-SPOT.TB陽性率は、ベーチェット病群が32.8%、対照群が15.7%で、T-SPOT.TB陽性は、ベーチェット病発症の独立した危険因子であった(OR 2.26、95%CI 1.11~4.60、P=0.03)。

 今回の研究の強みは、出生時にランダムに継承されるバリアントを結核リスクの指標としたことで、逆の因果関係の可能性を最小化できた点にある。

 Zhong氏らは「われわれの研究は、感染性因子と非感染性ぶどう膜炎リスクとの関連を示す新たなエビデンスを提供するもの」と述べている。また、結核と関連付けたベーチェット病スクリーニング実施の必要性、特定のベーチェット病治療薬の使用に際して結核の再燃・進行リスクに注意する必要性を指摘。ベーチェット病の発症に感染性因子が果たす役割についての理解が、同疾患の予防・治療法開発に寄与する可能性に期待を寄せている。

  • ※1 日本人著者は、横浜市立大学病院ベーチェット病診療研究センター長の竹内正樹氏(試験デザイン・草稿執筆)、同大学大学院眼科学教室主任教授の水木信久氏、特任准教授の目黒明氏、北海道大学名誉教授の大野重昭氏(いずれもデータ収集・分析・解釈)
  • ※2 rs4240897、rs2269497、rs41553512、rs12437118、rs6114027

(小路浩史)