ネアンデルタール人が有していた遺伝子と新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の関連性を示す新たな知見が示された。ドイツ・Max Planck Institute for Evolutionary AnthropologyのHugo Zeberg氏らは、重症COVID-19患者のゲノム解析を実施したところ、現代人がネアンデルタール人から受け継いだ遺伝子群が、COVID-19の重症化リスクを低減させることが明らかになったとProc Natl Acad Sci USA2021; 118: e2026309118)に報告した。

重症COVID-19患者2,244人分のゲノム配列を解析

 Zeberg氏らは昨年(2020年)、COVID-19の重症化リスクを増加させる遺伝的危険因子がネアンデルタール人から引き継がれたものであることを報告していた(Nature 2020; 587: 610-612、関連記事『コロナ重症化の鍵は「ネアンデルタール人」』)。

 今回の研究では、重症COVID-19患者2,244例のゲノム配列を解析。個人のウイルスに対する反応に影響を及ぼす遺伝的領域を4本の染色体上で新たに特定した。

 新たに特定した領域のうちの1つには、クロアチアで見つかった5万年以上前のネアンデルタール人1人、南シベリアで見つかった約7万年前および約12万年前のネアンデルタール人2人の計3人とほぼ同じ変異体が確認された。なお、この領域は12番染色体上に存在するという。

 そこで同氏らは、この変異体がCOVID-19に及ぼす影響を把握するため遺伝子解析を行った。

 その結果、同領域にある3つの遺伝子がウイルス感染時に産生される酵素をコードし、感染した細胞内のウイルスゲノムを分解する別の酵素を活性化することを発見した。

 この研究結果について、共著者で同研究所のSvante Pääbo氏は「ネアンデルタール人の遺伝的変異体がコードする酵素が、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染により症状が重症化するリスクを低下させているようだ」と述べている。

日本人の約30%に発現

 また両氏は、こうした遺伝子変異体が現代人に引き継がれた後における、保有者の頻度の変遷について、異なる年代における数千人規模の骨から収集したゲノム情報を用いて経年的に調査した。

 その結果、現在ではアフリカ地域以外の居住者の約半数、日本居住者の約30%に同変異体が発現していることが分かったという。

 今回得られた知見について、Pääbo氏は「約4万年前に絶滅したネアンデルタール人の免疫システムが、現代の人々に良い意味でも悪い意味でも影響を及ぼしているというのは驚くべきことだ」と述べている。

(陶山慎晃)