新型コロナウイルス感染症(COVID-19)では肺塞栓症(PE)を含む静脈血栓塞栓症(VTE)の合併頻度が高いとする海外の報告は多い。桑名市総合医療センター副病院長の山田典一氏、横浜南共済病院(横浜市)心臓血管外科部長の孟真氏らが率いる「日本でのCOVID-19とVTEの実態調査タスクフォース」は、日本の臨床におけるCOVID-19患者のVTEの実態を明らかにするため、症例集積研究を実施。「集中治療室(ICU)以外でVTEと診断されるケースもあり、注意が必要」とCirc J(2021年1月20日オンライン版)に発表した。

BMIが高めで人工呼吸器を要する傾向

 山田氏らは、以前に日本静脈学会と肺塞栓症研究会が共同で行ったアンケートの結果をAnn Vasc Dis(2020年12月15日オンライン版)に報告している(関連記事「日本人COVID-19患者、VTE発症の現状は?」)。報告によると、2020年3〜6月に国内77施設のCOVID-19入院患者1,243例のうちVTE発症者は7例であった。同氏らは、7例中5例の患者データを収集し、今回の研究対象とした。

 対象は全て男性、年齢54歳、体重87.7kg、BMI 27.7(いずれも中央値)で、全例が高血圧、糖尿病、脂質異常症などの併存疾患を有していた。入院時のD-ダイマー(中央値)は1.1μg/mL(範囲0.5〜3.6μg/mL)で、VTEの初発(一次)予防として抗凝固療法(未分画ヘパリン投与)を受けていたのは2例だった。入院中、全例が人工呼吸器を必要としたが、体外式膜型人工肺(ECMO)を要した患者はいなかった。

 入院からVTE発症までの日数(中央値)は10日(範囲8〜28日)で、VTEと診断された場所はICU、一般病棟、外来病棟とばらつきがあった。VTEの内訳はPEが3例〔深部静脈血栓症(DVT)を伴う、または伴わない〕、DVTのみが2例で、PEの重症度はいずれも重度ではなかった。初回の抗凝固療法として3例が未分画ヘパリン、2例がリバーロキサバンを投与されていた。

ICU退室後もVTEを監視する必要

 今回の研究では、VTEを発症したCOVID-19患者はBMIが比較的高く、全例が入院中に人工呼吸器を必要としていたことが分かった。また、一部の患者はICU以外の場所でVTEを発症・診断されていた。これまで、COVID-19患者のVTE発症はほとんどが男性でBMIが高く体重が重い傾向にあることが複数報告されている。山田氏らは「今回も以前の研究の報告と一致していた。肥満はVTEにおける既知の危険因子で、COVID-19患者でも重要なVTE発症の危険因子である可能性がある」と指摘している。

 COVID-19患者がVTEを発症するリスクはICU入室例で特に高いと報告されているが、今回は一般病棟や外来などICU以外で診断された患者も見られた。同氏らは「医療従事者の感染リスクのため画像検査の実施が困難になる可能性があり、COVID-19患者のVTEの過小診断につながるかもしれない」とし、「COVID-19患者はICU退室後もVTEを発症する可能性があること念頭に置くべき」と強調している。

 今回の研究では、COVID-19の肥満患者、入院中に人工呼吸器を必要とする患者などでVTEリスクが高く、ICU退室後もVTEを注意深く監視する必要があるなど、日本人COVID-19患者におけるVTEの幾つかの特徴が明らかにされた。同氏らは「今後はこれらの結果を検証するため、コホート/レジストリベースを含むさらなる研究が必要」としている。現在、日本で画像検査によって評価されたCOVID-19患者に焦点を当てたレジストリベースの研究が進行中だという。

(慶野 永)