肝臓に囊胞が発生し多発する、遺伝性肝疾患の多発性肝囊胞。囊胞の増大に伴い腹部が拡張して日常生活に支障を来すが、保険収載されている多発性肝囊胞に有効な薬剤はなく、アンメット・メディカルニーズが高いとされている。東北大学大学院内部障害学分野の佐藤陽一氏、教授の上月正博氏、東北医科薬科大学リハビリテーション学教授の伊藤修氏らの研究グループは、多発性肝囊胞のモデルラットに糖尿病治療薬メトホルミンを投与した実験で、肝囊胞や肝臓の線維化が抑制されることを初めて確認したとAm J Physiol Gastrointest Liver Physiol2021年1月13日オンライン版に発表した。

腎囊胞の抑制報告も

 多発性肝囊胞では増大した囊胞が腹部を圧迫して呼吸が困難に感じたり、腹部が張るなどの症状が現れたりするなどして、QOLが低下する。また、囊胞が増大すると体を前に屈めることが困難になり、日常生活動作(ADL)が制限されるようになる。

 この疾患に対しては、現在までに保険適用のある薬剤はなく治療法の確立が課題となっている。一方、メトホルミンをめぐり、近年、多発性囊胞腎患者への投与で腎囊胞が抑制されたという研究報告がなされた。多発性囊胞腎患者の8割近くに肝囊胞が合併しているとの報告もあり、囊胞形成のメカニズムも似ていることから、肝囊胞に対してもメトホルミンが抑制効果があると考えられている。そうした背景の下、今回の研究が行われた。

囊胞の拡大抑える効果を確認

 研究では多発性肝囊胞のモデルラットに飲水に混ぜたメトホルミンを12週間投与し、通常水を投与したラットと効果を比較した。その結果、メトホルミンを投与したラットでは肝囊胞や肝線維化が改善。さらに、囊胞を取り囲む胆管上皮細胞の増殖が抑制され、囊胞の拡大を抑える効果が確認された。

 同グループは過去に、多発性肝囊胞モデルラットに対する運動療法が肝囊胞を抑制したことを報告しており、今回のメトホルミンの投与で運動療法と同様に胆管上皮細胞の細胞増殖を抑制したことが分かった。運動療法で抑制効果を発揮するメカニズムとして、肝臓内の蛋白質であるAMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)の活性化が関与している可能性があり、メトホルミンも肝臓内のAMPKを活性化したことから、今回の研究結果により運動療法の肝囊胞抑制効果の機序を裏付ける可能性があるという。

(小沼紀子)