切除不能な遠隔臓器転移を有するステージⅣ期の大腸がんについて、原発巣に症状がない場合に原発巣を切除する意義は明らかにされていなかった。そうした中、国立がん研究センター中央病院大腸外科科長の金光幸秀氏らは、原発巣非切除で化学療法を行う治療に対し、原発巣切除術+術後化学療法の優越性を検証する第Ⅲ相ランダム化比較試験を実施。J Clin Oncol2021年2月9日オンライン版)に結果を報告した。

原発巣への対応は二分されていた

 転移巣が切除不能なステージⅣ期大腸がんにおいて、原発巣による大出血や高度貧血といった症状がない場合、米国では先行して化学療法を行うことが推奨されている。しかしエビデンスレベルは低く、日本では同様のケースに対する標準治療が定まっていなかった。また、大腸の出血や狭窄の予防、がん幹細胞が多く含まれる原発巣を早期に切除し全身のがん細胞制御を期待するといった観点から、原発巣切除が選択される場合もあった。しかし、手術に伴う合併症や、化学療法開始の遅延が懸念されていた。

 そこで金光氏らは、原発巣による症状がなく切除不能遠隔臓器転移を発症した大腸がん患者を対象に、2012年6月~19年4月に化学療法単独治療を受けた82例と原発巣切除後に化学療法を受けた78例の生存期間を比較した。

切除例と非切除例で生存期間に有意差なし

 その結果、生存期間は化学療法単独群が26.7カ月、原発巣切除+術後化学療法群は25.9カ月で有意差がなかった(ハザード比1.10、95%CI 0.76~1.59、P=0.69、片側検定)。さらに原発巣切除+術後化学療法群では有害事象の頻度が高く、術後合併症による死亡が3例発生した。化学療法単独群では、原発巣に起因する腸閉塞症などで緩和手術が必要になったのは11人(13%)で、残り87%は生存期間内での緩和手術が不要だった(図1、2)。

図1. 化学療法単独群(青)と原発巣切除+術後化学療法群(紫)の生存期間

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図2. イラストで見る試験結果

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(図1、2とも国立がん研究センタープレスリリースより)

 こうした結果を受け金光氏らは、原発巣による症状のない転移巣切除不能大腸がんでは、非切除のまま化学療法を先行することが第一選択となる可能性を示唆。根拠が不十分なまま行われていた化学療法施行前の原発巣切除に歯止めをかけ、国内外のガイドラインに標準治療として盛り込まれることに期待を示した。

(須藤陽子)