急性心筋梗塞(AMI)の治療では、胸痛発生後の迅速な救急搬送および直接的経皮的冠動脈インターベンション(primary PCI)施行が重要である。しかし、昨今の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)蔓延に伴い、AMI患者当人やバイスタンダーが救急要請を躊躇するケースが見られており、生命予後への悪影響が懸念されている。国立循環器病研究センターの北原慧氏らは、昨年(2020年)4月7日に発令された緊急事態宣言以後におけるST上昇型AMI(STEMI)患者の発症〜同センター到着に要した時間などを検討。発令以前と比べ1.7時間の有意な延長が認められたと、Open Heart2021年2月6日オンライン版)に報告した。

primary PCI施行率も約14%ポイント低下

 COVID-19蔓延に伴うPCI施行率の低下とAMI患者の予後悪化が世界的に懸念されている。米国の報告によると、COVID-19の流行拡大が認められた昨年3月以降には、それ以前の14カ月と比べSTEMI患者へのPCI施行率が約40%低下していた(J Am Coll Cardiol 2020; 75: 2871-2872)。

 今回、北原氏らは同センターのAMIレジストリを用い、緊急事態宣言発令前後におけるSTEMI患者のアウトカムを比較した。対象は、2018年1月1日〜20年8月14日に同センター病院に入院したSTEMI患者422例。このうち、緊急事態宣言発令前に入院したのは359例、発令後は63例だった。

 解析の結果、発症〜同センター到着に要した時間(中央値)は発令前に比べ発令後で1.7時間の有意な延長が認められた(2.4時間 vs. 4.1時間、P=0.02)。また、来院者のうち発症後24時間以上が経過した患者の割合も発令後で有意に増加していた(14.2% vs. 25.4%、P=0.03)。さらに、primary PCI施行率が発令後には約14%ポイント有意に低下していた他(82.5% vs. 68.3%、P=0.009)、機械的合併症(自由壁破裂、切迫破裂、心室中隔穿孔、乳頭筋断裂)の発症率も有意に上昇していた(3.6% vs. 14.3%、P<0.001、)。

図. 緊急事態宣言発令前後で比較したAMI患者のアウトカム

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(国立循環器病研究センタープレスリリースより)

 以上の結果について、同氏らは「COVID-19の拡大後に、AMI患者の発症から受診までにかかる時間が長くなり、重症合併症の割合の増加につながった可能性が考えられた」と考察。「緊急事態宣言発令中であっても、重大な疾患が示唆される症状の出現時には適切に医療を受けるよう、行政や学会とともに市民への啓発に取り組みたい」としている。

(平山茂樹)