新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行拡大により社会活動が著しく制限され、経済活動にも影響が及んでいる。社会・経済活動の悪化は、口腔を含む身体的な健康に影響を与える可能性がある。東京医科歯科大学大学院国際健康推進医学分野の松山祐輔氏らは、日本人2万5,000人超を対象としたインターネット調査JACSIS(Japan COVID-19 and Society Internet Survey)研究の結果、COVID-19の影響で社会経済状況が悪化した人では歯痛が多く見られたとJ Dent Res2021年4月1日オンライン版)に発表した。

精神的ストレスが原因の可能性

 JACSIS研究では、2020年8月25日~9 月30日にランダムに抽出した15~79歳の日本人2万8,000人を対象にインターネット調査を実施し、COVID-19流行が社会経済状況に及ぼす影響(世帯収入の減少、仕事の減少、失業)と直近1カ月の歯痛の関連について検討した。

 解析対象2万5,482人のうち直近1カ月間に歯痛を経験したのは9.8%。世帯収入の減少は25.1%、仕事の減少は19.5%、失業は1.1%に認められた(図1)。

図1. COVID -19の影響による社会経済状況の悪化と歯痛の関連

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 多変量ロジスティック回帰分析で年齢、性、居住地などを調整後、歯痛のリスクは世帯収入の減少がなかった群に対して減少した群で42%〔オッズ比(OR)1.42、95%CI 1.28~1.57〕、仕事の減少がなかった群に対して減少した群で58%(同1.58、1.41~1.76)、失業しなかった群に対して失業した群で117%(同2.17、1.64~2.88)いずれも上昇した。

 さらに世帯収入の減少と歯痛の中間因子を媒介分析で検証したところ、世帯収入の減少と歯の痛みの関連は、精神的ストレス(21.3%)、歯科受診の延期(12.4%)、歯磨きの減少(1.5%)、間食の増加(9.3%)が中間因子として抽出された(図2)。

図2.世帯収入の減少と歯痛の中間因子

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(図1、2とも東京医科歯科大学プレスリリース)

 以上から、松山氏らは「COVID-19流行の影響により社会経済状況が悪化した人では歯痛を訴える割合が多いことが分かった。社会経済状況の悪化が精神的ストレスや健康行動の変容を招き、歯の痛みを引き起こした可能性がある。収入の減少や失業などCOVID-19の経済的影響に対する施策により、歯科疾患の悪化が回避できる可能性がある」と結論した。

(大江 円)