【ソウル時事】北朝鮮が東京五輪不参加を決めたのは、新型コロナウイルス流入を極度に警戒する中、一向に収束の気配が見えない日本に選手団を派遣するのはリスクが大きいという判断からとみられる。一方、五輪を南北関係改善の機会にしたい考えだった韓国には誤算だ。
 北朝鮮の夏季五輪不参加は1988年のソウル五輪以来となる。体育省が公表した不参加の理由は「新型コロナによる世界的な保健危機の状況から選手を守るため」。医療水準が低く、ウイルスが流入、拡散すれば多数の死者が出かねない北朝鮮は昨年、国境を封鎖し、国家非常防疫体制を宣言。新たに感染力が強い変異ウイルスが世界で広がっていることもあり、朝鮮労働党機関紙・労働新聞は6日も「小さな緩み、油断も絶対に禁物」と訴えている。
 バスケットボール好きで知られる金正恩総書記はスポーツに力を入れてきており、最近まで「五輪参加に向けた具体的な動きがある」(韓国外交筋)と指摘されていた。金総書記の妹、与正氏が訪韓した2018年平昌冬季五輪は南北、米朝首脳会談につながったが、今回は米朝、南北、日朝いずれも進展の機運がなく、防疫リスクを冒すほどの外交的メリットはないという判断もあった可能性がある。
 一方、韓国統一省関係者は「東京五輪が韓(朝鮮)半島の平和と南北の和解・協力を進展させる契機になることを願っていたが、残念だ」と述べた。韓国は東京五輪の際に日本で正恩氏や与正氏らと文在寅大統領が接触し、南北関係改善につなげる構想を描き、文大統領は「東京五輪は韓日、南北、日朝、そして米朝間の対話の機会になり得る」と期待を表明していた。
 韓国政府が昨秋以降、日本に融和的な姿勢を示してきた背景には、構想実現に日本の協力を得たいという思惑もあったとみられている。構想の頓挫により「以前の対日強硬姿勢に戻るのではないか」(韓日議連関係者)と懸念する声もある。 (C)時事通信社