日本癌治療学会、日本癌学会、日本臨床腫瘍学会の合同ワーキンググループは、がん患者における新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチン接種におけるエキスパートオピニオンとして「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)とがん診療についてQ&A-患者さんと医療従事者向け ワクチン編 第1版-」(以下、第1版)を作成し、3月31日に公開した。国内外の学会や団体の方針や最新の文献を参考に、ワクチンについて正しい評価、判断を下すことを目的としており、ベネフィットとリスクを理解し、ワクチン接種の前向きな検討を推奨している。

外科療法:術前/術後とも接種は前向きに検討

 第1版では、外科療法、放射線療法、薬物療法別にSARS-CoV-2ワクチン接種の可否、タイミング、注意について解説している。外科療法については、「手術予定あるいは手術後であっても接種は前向きに検討すべきと考えられる」とした。全米総合がん情報ネットワーク(NCCN)は、外科手術を受ける患者に対する接種を推奨しており1)、英国王立外科学会のガイダンスでは、接種していないという理由で予定手術を延期したり、接種のスケジュールによって手術日を変更することは推奨していないという2)

 考慮すべき点としては接種後の発熱や悪寒を挙げている。2回目接種時に約15%で発熱が生じることが知られているが、発熱がワクチンの副反応なのか、もしくは手術に関連するものかを鑑別するには、「接種から手術まで数日〜1週間空ければ問題ないと考えられている」と解説している2)。脾摘を伴う場合は、免疫不全状態も考慮して手術前後に2週間以上の間隔を開けて接種することを推奨している1, 3)

放射線療法:治療中もしくは治療前であっても積極的に接種を検討

 放射線療法については「治療中あるいは治療前後であっても接種は積極的に検討できると考えられる」とした。接種時期、注射部位、治療内容に関連した注意事項などについては、担当の放射線腫瘍医への相談を推奨している4)

 ワクチン接種と放射線治療のタイミングについては「データはない」としながらも、「発熱・倦怠感などのワクチンの副反応で放射線療法を休止することは避けるべき。可能であれば翌日の照射がない週末に接種を受けるのもよいかもしれない」としている。化学放射線療法については、「薬剤投与日・投与予定日の数日以内、骨髄抑制の期間は接種を避けた方が望ましいかもしれない。薬物療法のQ&Aも参考にしていただきたい」としている。

 接種後の注意点については「接種による放射線療法の合併症増強の心配はない。骨髄抑制の期間でなければ、発熱・疼痛の副反応は一般的な対応でよいと思われる」としている5)

殺細胞性抗がん薬:治療中もしくは治療前であっても積極的に接種を検討

 薬物療法については「殺細胞性抗がん薬」「分子標的薬」「免疫チェックポイント阻害薬(ICI)」「ステロイド、免疫抑制薬など」に分けて解説している。殺細胞性抗がん薬については「治療中であっても接種は前向きに検討すべきと考えられる」とした。接種のタイミングについては「明確なデータはなく、現時点ではどのタイミングでも接種可能」としながらも、避けた方が望ましいタイミングとして下記を挙げている。

  • 殺細胞性抗がん薬投与日(制吐薬として使用されるステロイドによるワクチン効果減弱の可能性)
  • 殺細胞性抗がん薬による骨髄抑制のため白血球数が最小になる時期(ワクチン効果減弱の可能性)
  • 血小板減少を伴うレジメンでの血小板減少時期(筋肉注射による血種のリスクを避けるため)
  • 殺細胞性抗がん薬投与予定日前の2、3日以内(ワクチン接種後2、3日は発熱を認めることがあるため)

 また、骨髄抑制期間の前後に接種すると、発熱が副反応によるものか、発熱性好中球減少症(FN)によるものか、鑑別が困難となる可能性があると注意を促している。FNのリスクについては「個別の症例で判断する必要があるが、悩ましい場合はFNとして対応することが望ましいと思われる」としている。

分子標的薬:前向きに接種を検討、接種を避けるべき期間は想定せず

 分子標的薬については「小分子化合物、抗体薬などさまざまだが、治療中であっても接種は前向きに検討できると考えられる」とした。接種のタイミングについては「小分子化合物の多くは連日の内服であるため、接種を避けるべき時期は特に想定されない」としている。

 接種後の注意点としては「上皮成長因子受容体(EGFR)チロシンキナーゼ阻害薬など、薬剤性肺炎に注意が必要な分子標的薬投与中にワクチンを接種して発熱を認めた場合、発熱がワクチンによるものか、薬剤性肺炎によるものか、鑑別が困難になる可能性がある」「薬剤性肺炎のリスクは薬剤の種類や使用期間により異なるため、個々の患者ごとに発熱時の受診タイミング、休薬の要否などをあらかじめ想定しておくことが望ましいと思われる」としている。

ICI:推奨するも、分子標的薬と同様に薬剤性肺炎への注意を

 ICIについては「投与中であっても接種は積極的に検討できると考えられる」とした。接種のタイミングについては「一般にICIの半減期は長く、接種の効果や安全性は接種タイミングに左右されにくいと想定される。現時点ではどのタイミングでも接種可能」としながらも、「可能であれば、下記のタイミングは避けた方が望ましいかもしれない」としている。

  • ICI投与予定日前の2、3日以内(ワクチン接種後2、3日は発熱を認めることがあるため)

 接種後の注意点については、一部の分子標的薬と同様に薬剤性肺炎への注意が必要で、同様の対応を想定することが望ましいとしている。

ステロイド、免疫抑制薬:薬剤により接種タイミングの調整を

 一定量以上のステロイドやその他の免疫抑制薬投与例はSARS-Co2-2ワクチンの臨床試験から除外されているが、悪性腫瘍患者、固形臓器移植患者を含むイスラエルの研究では、免疫抑制を来す治療が行われていた患者についても接種による予防効果が報告されており6)、第1版では「接種を推奨するものと考えられる」とした。米疾病対策センター(CDC)や英国保健サービス(NHS)でも、免疫低下の状態にある患者はCOVID-19の重症化リスクが高く、接種を行うことを推奨しているという7, 8)

 接種のタイミングについては、①ステロイド(投与量問わず)、免疫抑制薬/調整薬(ミコフェノール酸モフェチル、インターロイキン(IL)-6阻害薬、カルシニューリン阻害薬、経口シクロフォスファミドなど)を使用時は接種タイミングの調整や免疫抑制薬の用量調節は不要②免疫抑制薬の新規開始時は2週間前までの接種を推奨3)③COVID-19に対する治療薬としても挙げられる抗体製剤を使用している場合、最終投与後少なくとも90日間以上間隔を空けて接種することを考慮した方がよい④造血幹細胞移植後の場合、前述の免疫抑制薬の基準に加え、移植後ワクチンアップデートにおける不活化ワクチン開始のタイミングである移植3カ月後が推奨されているが、現時点では他の不活化ワクチンとの同時接種は推奨されておらず、前後2週間の間隔を空けることが推奨される⑤シクロフォスファミドの静脈投与の場合、可能であれば接種1週間後が推奨される⑥リツキシマブの場合、可能であれば接種を次回治療コースの4週間前に予定し、2回接種であれば接種後2~4週間間隔を空けての投与が推奨される―としている。

 接種後の注意点としては「副反応に注意する。発熱を来した場合の対応を主治医と事前に検討しておくことが推奨される」としている。

  • 日本のガイドラインでは6カ月後以降が基本的に推奨されるが、海外のガイドラインでは移植後の不活化ワクチン接種開始は3カ月後から可としている

1) Recommendations of the NCCN COVID-19 Vaccination Advisory Committee

2) Vaccinated patients guidance

3) MSK COVID-19 VACCINE INTERIM GUIDELINES FOR CANCER PATIENTS

4) 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチンについての提⾔

5) 新型コロナワクチンQ&A

6) N Engl J Med 2021年2月24日オンライン版

7) CDC's COVID-19 Vaccine Rollout Recommendations

8) COVID-19: the green book, chapter 14a

(安部重範)