重度精神疾患(Severe Mental Illness;SMI)による心血管疾患(CVD)発症への影響に関する検討は数多いが、予後に関してはあまり報告がないという。英・University of EdinburghのKelly Fleetwood氏らは、SMI患者における心筋梗塞(MI)発症後の死亡および冠血行再建術リスクについて検討し、結果をBMC Med2021; 19 : 67)に報告した。

初発MIの入院患者23万例超を解析

 統合失調症や双極性障害、うつ病を含むSMI患者では、MIの予後は不良であることが報告されているが、長期的な予後については報告が少なく不明な点も多いという。そこでFleetwood氏らは、MI発症により入院したSMI患者の精神疾患別に見た死亡(30日、1年、5年)や冠血行再建術のリスクなどを後ろ向きに検討した。

 対象は、同国の緊急入院患者の詳細なデータを登録したSMIR01(Scottish Morbidity Record General/ Acute Inpatient and Day Care dataset)のうち、1991年1月〜2014年12月に初発MIにより入院した18歳以上の患者。SMIに関しては、精神疾患による入院患者の詳細な情報を記録したSMR04も用いた。なお、複数の精神疾患を有する患者については統合失調症を最重症とし、次いで双極性障害、最軽症をうつ病と分類した。

 条件を満たした23万5,310例を解析した。このうちSMIは統合失調症923例(0.4%)、双極性障害642例(0.3%)、うつ病6,239例(2.7%)で、それぞれ女性が40.0%、54.0%、57.0%、MI発症時の平均年齢が62.3歳、67.5歳、68.9歳であった。

死亡リスクは高いが、血行再建術リスクは低下

 ロジスティック回帰モデルを用いて、非SMI患者と比べたSMI患者の精神疾患別に見た入院30日死亡のオッズ比(OR)を求めた。その結果、性、MI発症年、MI発症時の年齢などで補正したORは、統合失調症1.95(95%CI 1.64〜2.30)、双極性障害1.53(同1.26〜1.86)、うつ病1.31(同1.23〜1.40)と、いずれも非SMI患者に比べ30日死亡リスクは高かった。1年および5年死亡リスクにおいても同様であった。

 また、Cox比例ハザード回帰モデルにより、非SMI患者と比べたSMI患者の精神疾患別に見た冠血行再建術のハザード比(HR)を検討した。その結果、補正後HRは、統合失調症0.57(95%CI 0.48〜0.67)、双極性障害0.69(同0.56〜0.85)、うつ病0.78(同0.73〜0.83)と、いずれも非SMI患者に比べ冠血行再建術リスクは低いことが分かった。

 今回の結果から、Fleetwood氏らは「SMI患者においてMIの予後について非SMI患者との"格差"が認められた。この要因解明に取り組むことは急務である」と結論。「同時に、循環器内科医や総合診療医、家庭医はSMI既往のあるMI未発症(未治療)者に対しては注意すべき」と警鐘を鳴らしている。

松浦庸夫