抗PD-L1抗体アベルマブ(商品名バベンチオ)は、今年(2021年)2月に根治切除不能な尿路上皮がんにおける一次化学療法後の維持療法の適応追加が承認された。3月31日にオンラインで開かれたプレスセミナー(メルクバイオファーマ/ファイザー共催)では、尿路上皮がん薬物療法のアンメット・メディカルニーズおよび承認の根拠となった第Ⅲ相試験JAVELIN Bladder 100から得られた知見について2人の医師が解説した。

一次化学療法の効果持続が積年の課題

 『膀胱癌診療ガイドライン2019年版』では、切除不能または転移を有する尿路上皮がんの一次治療としてゲムシタビン+シスプラチン(GC)療法が推奨され、腎機能障害を伴う症例に対する一次治療としてゲムシタビン+カルボプラチン(GCarbo)療法が弱く推奨されている。いずれも投与初期は奏効するものの、その後に進行することが報告されている(J Clin Oncol 2005; 23: 4602-4608)

 両療法について、山口大学大学院泌尿器科学教授の松山豪泰氏は「継続的な使用により骨髄抑制などの副作用が見られるなど、長期継続が難しいという課題がある」と解説。また、シスプラチンベースの化学療法、カルボプラチンベースの化学療法は、いずれも3〜5サイクル投与に対する6〜9サイクル投与の全生存(OS)延長効果を示さなかったことが報告されており、(J Urol 2018; 200: 1207-1214)、同氏は「一次化学療法の治療効果を持続させる新たな治療が求められてきた」と指摘した。

 なお、一次化学療法増悪後の二次治療については抗PD-1抗体ペムブロリズマブ(承認名キイトルーダ)が実質的な標準治療となっており、ガイドラインでも推奨されている(関連記事「キイトルーダ、尿路上皮がんでも承認取得」)。

一次化学療法後に増悪を認めない尿路上皮がんに新たな治療選択肢

 このような背景の下、2020年の第56回米国臨床腫瘍学会(ASCO20 Virtual Scientific Program)のプレナリーセッションにおいて、アベルマブ維持療法の非盲検第Ⅲ相ランダム化比較試験であるJAVELIN Bladder 100の結果が発表された。

 同試験では、GC療法またはGCarbo療法を4~6サイクル施行後に増悪を認めない局所進行/転移性尿路上皮がん患者を対象に、アベルマブ+支持療法併用の有効性および安全性を標準治療である支持療法単独と比較。主要評価項目のOSの有意な延長が示された(関連記事「アベルマブ維持療法で尿路上皮がんのOS延長」)。

 尿路上皮がんにおけるアベルマブ維持療法について、慶應義塾大学泌尿器科教授/同大学病院副院長の大家基嗣氏は「これまで、一次化学療法により腫瘍縮小または維持が認められた症例に対し、松山先生が解説されたように多サイクル実施によるOS延長効果は期待できず、骨髄抑制などの副作用の懸念もあり、積極的な薬物療法を行うことができなかった。しかし今回、このアンメット・メディカルニーズを満たし、今後の尿路上皮がん治療戦略を大きく変えうる新たなレジメンが登場した()」と評価した。

図. 進行尿路上皮がんの薬物療法

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(プレスセミナー発表資料)

 なお、根治切除不能な尿路上皮がんに対するアベルマブの適応は「化学療法後の維持療法」でありサイクルに関する記載はないが、同氏は「JAVELIN Bladder 100試験のエビデンスから、一次化学療法としてGC療法またはGCarbo療法を4~6サイクル実施後に増悪を認めない患者が対象となる」と説明した上で、「4~6サイクルを実施できる症例は限られており、将来的にはより早期のアベルマブ維持療法導入が検討されるかもしれない」と私見を述べた。

 現状の適切な導入タイミングについては「例えば、骨髄機能が低下している患者では4サイクル完了後にアベルマブ維持療法を検討し、若年者で骨髄機能が保持されていれば6サイクルを目指すなど、個々の患者の状態に応じて判断すべき」と解説した。

(安部重範)