強度の高いウォーキングは下肢末梢動脈疾患(PAD)患者の歩行距離と歩行時間の改善に有効であることが、米・Northwestern UniversityのMary M. McDermott氏らが行った多施設共同ランダム化比較試験(RCT)で明らかになった。虚血性疼痛を誘発しない低強度のウォーキングは運動を全くしない場合と同等の効果しかなかった。詳細はJAMA2021; 325: 1266-1276)に報告された。

6分間歩行距離が延長

 下肢PAD患者の歩行能力改善には、コーチの指導下で行う高強度のウォーキングが推奨されているが、高強度のウォーキングは虚血性下肢疼痛を誘発することから、継続率は低い。一方、虚血性下肢疼痛を誘発しない低強度のウォーキングでは、継続率が高まる可能性はあるものの、歩行能力改善効果は明らかでない。

 そこでMcDermott氏らは、4つの同国内医療機関で登録された下肢PAD患者305例(平均年齢69.3歳、男性159例、女性146例)を、低強度運動群(116例)、高強度運動群(124例)、運動なし群(65例)の3群にランダムに割り付け、12カ月間介入して歩行能力改善効果を比較検討した。

 低強度運動群は虚血性下肢疼痛を伴わないゆっくりとした速度のウォーキングを、高強度運動群は虚血性下肢疼痛を伴うほど速度が速いウォーキングをそれぞれ1日50分間、週5回、12カ月間行った。運動時は加速度計を装着してウォーキングの強度と距離を測定した。両運動群は最初の1カ月間はコーチが自宅を訪ねて加速度計の使い方を指導し、2カ月目以降は加速度計のデータに基づきコーチがリモートで指導した。運動なし群では運動は行わず、健康に関する教育を電話で週1回12カ月間受けた。

 主要評価項目は、12カ月後における6分間歩行距離(6MWD)のベースラインからの平均変化量とした。

 305例中250例(82%)が12カ月間の試験を終了した。

 ベースライン時と12カ月後の平均6MWDは、低強度運動群がそれぞれ332.1mと327.5m、高強度運動群が338.1mと371.2m、運動なし群が328.1mと317.5m。

 6MWDの平均変化量は、低強度運動群が-6.4m(95%CI -21.5~8.8m、P=0.34)、高強度運動群が34.5m(同20.1~48.9m、P<0.001)、運動なし群が-15.1 m(同-35.8~5.7m、P=0.10)。低強度運動群と高強度運動群の差は-40.9m(同-61.7~-20.0m、P<0.001)、低強度運動群と運動なし群の差は8.7m(同-17.0~34.4m、P=0.44)だった。

トレッドミル上の歩行時間も延長

 高強度運動群は、低強度運動群や運動なし群と比べて12カ月後の6MWDが有意に延長した。さらに高強度運動群では、他の2群に比べて12カ月後のトレッドミル上の歩行時間についても有意な延長が見られた。

 以上から、McDermott氏は「虚血性下肢疼痛を伴う高強度のウォーキングは、低強度のウォーキングに比べてPAD患者の歩行能力を有意に改善した」と結論。「運動効果を得るには、虚血性下肢疼痛を伴う高強度のウォーキングを行う必要がある。疼痛は時間とともに軽減し、ほとんどの人は痛みなしに長距離を歩けるようになる。また、継続率が低い運動療法において、通院不要のリモート指導で効果があったことは重要だ。今後は、PAD患者の歩行能力改善と虚血性症状との関連を検討する必要がある」と付言している。

(大江 円)