【ワシントン時事】新型コロナウイルスの感染者数・死者数が世界最多の米国で、ワクチンの接種歴を示す「ワクチンパスポート」を導入する動きが本格化してきた。経済界を中心に期待が高まる一方、保守派は「プライバシー侵害につながる」と反対。対立の火種となりつつある。
 米国内でワクチン接種を受ければ、現在も疾病対策センター(CDC)発行の「接種証明カード」を受け取ることができる。議論されているワクチンパスポートは、これを電子データ化し、スマートフォンのアプリなどで受信する仕組みだ。
 この仕組みを使って外食での入店時やコンサートなど大勢が集まる催し物の入場時に証明提示を求めれば、対人距離確保のための人数制限が不要になると経済界は目算する。移動規制で苦境に立つ航空大手や旅行業界は3月、接種証明に関する統一基準を策定するよう、米政府に要望を出した。
 米メディアによると、少なくとも17の企業や非営利団体がパスポート用のウェブサイトやアプリを開発中。ニューヨーク州も最近、接種証明や陰性証明を取得できるアプリ「エクセルシオール」を導入した。
 これに対し保守派は、接種の有無など健康に関する個人情報収集にはプライバシー上の問題があると主張。いずれも共和党が知事を務めるテキサス、フロリダの両州は、州機関や州の補助金を受ける民間団体が、利用者にパスポート提示を義務付けることを禁止する知事令を出した。
 フロリダ州のデサンティス知事は義務化について、「接種の有無で人々を2階級に分けるものだ」と指摘する。共和党支持者には接種に慎重な傾向が強いことも義務化禁止の背景にあるだけに、同党はけん制を強めている。
 連邦政府にとっては、経済回復に向けた武器となるパスポートの普及は好ましい展開だが、批判の矢面には立ちたくないという本音ものぞく。サキ大統領報道官は6日の記者会見で、「接種証明の携行義務付けは支持しない」と表明。パスポートは民間で活用する形にとどめるべきだとの考えを示し、プライバシー侵害や差別など、アプリ開発に伴う懸念を盛り込んだガイドラインを近く作成すると明らかにした。 (C)時事通信社