台湾・National Taiwan UniversityのTa-Chou Ng氏らは、同国が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行を収束に導いた要因を数理モデルで検討。その結果、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染者とその接触者を個別に検出・追跡・隔離する症例介入と、国民全体に社会的距離(ソーシャルディスタンシング)の確保やマスク着用などを求める集団介入の2つを併用したことが成功の要因で、いずれの介入も単独では効果が十分でなかった可能性があるとJAMA Intern Med2021年4月6日オンライン版)に発表した。

発症前段階での感染伝播が55%

 人口2,360万人の台湾は第一波でのCOVID-19収束に成功しており、昨年(2020年)4~12月の253日間で国内感染例は確認されていない。同国では国境での水際対策措置に加え、症例介入〔COVID-19患者の検出および隔離、接触者の追跡、濃厚接触者の隔離(症状の有無を問わず14日間)〕と、集団介入(社会的距離の確保、マスク着用、個人レベルでの衛生管理)を行った。

 Ng氏らは今回、台湾のSARS-CoV-2感染者データとCOVID-19の数理モデル(Lancet Glob Health 2020; 8: e488-e496)を用い、各介入を単独で行った場合と併用した場合の実効再生産数(Rt)を算出して効果を検証した。

 まず、COVID-19と確定診断された158例(年齢中央値45歳、男性53%)のデータを解析した結果、平均潜伏期間は5.50日〔95%確信区間(CrI)1.06~13.45日〕、平均発症間隔(一次感染者の発症から二次感染者の発症までの期間)は5.86日(同-0.64~21.51日)だった。また、発症前段階での感染伝播が55%(同41~68%)を占めた。

Rtは単独介入でも低下するが、1未満までの低下は併用時のみ

 次に、感染モデルでは新規感染者の40%が無症候性感染者で、その感染力は症候性感染者の50%と仮定。発症前段階の感染者における感染力は症候性感染者と同等と仮定した。また、介入なしの場合の基本再生産数(R0)を2.50とした。

 検討の結果、症例介入を単独で行った場合のRtは、R0 2.50から1.53(95%CrI 1.50~1.57)に39%減少すると推計された。集団介入を単独で行った場合のRtは、R0 2.50から1.30(同1.03~1.58)に48%減少すると推計された。いずれの介入も単独ではRtが1未満とならず、流行収束には不十分であることが示された。

 一方、症例介入と集団介入を併用した場合のRtは0.85(同0.78~0.89)と推計され、流行が収束に転じる1未満に抑えられることが示された()。

図. SARS-CoV-2感染対策における介入方法別に見た感染者数の推移

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JAMA Intern Med 2021年4月6日オンライン版

 Ng氏らは「COVID-19の流行は発症前段階および無症候性感染者からの伝播が大きな割合を占めるため、抑制するには症候性COVID-19患者の検出と隔離のみでは不十分」と考察し、「完璧な接触者追跡プログラムと効果的な公衆衛生システムが存在する環境下でも、SARS-CoV-2感染制御には集団介入が不可欠」と結論している。

 なお、症例介入の隔離期間を7日間に短縮した場合のRtは、14日間とほぼ同等の1.61(95%CrI 1.57~1.65)と推計され、隔離期間の短縮により公衆衛生システムの負担を軽減できる可能性が示唆された。

(太田敦子)