新型コロナウイルスワクチンの高齢者向け接種が始まった。感染者数の増減は内閣支持率と連動する傾向にあり、接種の成否は政権浮沈のカギを握る。菅義偉首相は早期普及に全力を挙げるが、最終目標の一般向け接種はいまだ見通せず、当面は手探りの対応が続きそうだ。
 「ワクチンは発症や重症化に対する『切り札』だ。一日も早く、多くの国民に届けたい」。首相は12日、東京都八王子市の接種会場を視察後、記者団にこう強調。自治体と意思疎通を図りながら、接種作業を進める考えを示した。
 政府は、ワクチンの供給量が少ない4月を「試運転」(高官)と位置付け、5月の大型連休明けから本格的に拡大する計画。首相は12日の衆院決算行政監視委員会で「6月末までに少なくとも1億回分を確保できる」との見通しを示した。
 感染状況が秋までに行われる次期衆院選と密接に絡むことも、政府が普及を急ぐ背景にある。ワクチン接種の効果は海外でも確認されており、首相周辺は「接種をしっかりやれば、衆院解散のフリーハンドを握ることができる」と期待。自民党内からは「コロナを乗り切れば『首相はよくやった』となる」(重鎮)と、支持率向上につなげる本音も漏れる。
 ただ、ワクチン接種は高齢者に続き、基礎疾患のある人や一般向けを控えるが、詳細なスケジュールは依然不透明なまま。12日の衆院決算委でも、首相は高齢者向け接種の終了時期すら明確にせず、立憲民主党の枝野幸男代表は党役員会で「当事者意識がない」と批判した。
 ワクチン接種に対する国民の期待は高く、ここで混乱が生じれば、批判の矛先が政権に向くのは避けられない。自民党幹部は「政権の命運を決める。うまくやらないといけない」と指摘した。 (C)時事通信社