【ジャカルタ時事】人口の87%をイスラム教徒が占めるインドネシアで、英国製の新型コロナウイルスワクチンが有力イスラム団体から「非イスラム」と認定され、接種への影響が懸念されている。コロナ禍収束へ接種を加速したい政府は難題を抱え込んだ格好だ。
 ワクチン接種は1月にスタート。当初は中国製だけだったが、英製薬大手アストラゼネカ製の111万回分が3月8日に到着した。政府はその2週間前に緊急使用許可を出し、接種の加速を期したが、海外での「血栓」報告を受け一時保留した。
 政府がその後再び許可すると、イスラム指導者評議会(MUI)が「アストラ製ワクチンはハラム(イスラム教で禁忌の意味)」とするファトワ(宗教令)を出した。「製造過程で豚の成分が使われた」のが理由。同時に「緊急性やワクチン不足を考慮し使用を認める」との見解も示したものの、「もともと低いワクチンへの信頼感がさらに低下する」(野党議員)懸念が広がった。
 国民の間ではワクチンに対する抵抗感が根強く、2月の世論調査では41%が「接種を拒否する」と回答。「ハラル(イスラム教で合法の意味)製品しか接種しない」は82%にも達していた。
 「ファトワの影響に気をもんだ」(地元メディア)ジョコ大統領は、アストラ製の接種開始に立ち会い、MUIも使用を認めた点を強調。接種第1号には、イスラム教徒が94%を占める東ジャワ州のイスラム指導者が選ばれた。
 MUI議長だったマアルフ副大統領の報道官も「ハラムか否かを問うべきでない」と接種を呼び掛けたが、不信感は消えない。東ジャワ州のイスラム学校長は「禁忌なのに使用許可はあり得ない」と反発し、同校教師1000人に接種を禁じた。
 政府は「全人口の67%に当たる1億8150万人への接種を来年3月までに完了する」という目標を掲げるが、今月12日時点で2回の接種を終えた人は531万人と全人口の約2%にとどまる。アストラ製ワクチンは「生産国の禁輸」(保健省)で調達も遅れており、政府は今月から接種者数を減らしている。 (C)時事通信社