ドイツ・Universitätsmedizin GreifswaldのAndreas Greinacher氏らは、アストラゼネカ(AZ)の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチンChAdOx1 nCov-19の接種後に血小板減少症を伴う血栓症を発症したドイツとオーストリアの11例を解析。その結果、ヘパリンの投与歴がないにもかかわらず、ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)と臨床的に類似する特徴が見られたとN Engl J Med2021年4月9日オンライン版)に報告した。同氏らは、HITとの混同を避けるため、この疾患をワクチン誘発性免疫性血栓性血小板減少症(vaccine-induced immune thrombotic thrombocytopenia;VITT)と呼ぶよう提案している。(関連記事「コロナワクチン接種後に発生する血栓症」)

血小板第4因子に依存する血小板活性化

 Greinacher氏らは2021年3月15日までに、ChAdOx1 nCov-19ワクチン接種後5~16日目に1つ以上の血栓性イベントが発生した11例〔女性9例、年齢中央値36歳(範囲22~49歳)〕を確認した。このうち、症状の発現または血栓症の診断以前にヘパリンを投与されていた者はなかった。

 血栓性イベントの内訳は、脳静脈血栓症が9件、内臓静脈(門脈、腸間膜静脈、脾静脈、肝静脈)血栓症が3件、肺塞栓症が3件、その他の血栓症が4件だった。5例に播種性血管内凝固症候群(DIC)が認められ、6例が死亡した。11例の血清検体は、酵素免疫測定法(ELISA)による血小板第4因子(PF4)-ヘパリン複合体抗体検査で強い陽性反応を示した。全ての反応はヘパリン(100IU/mL)の添加により阻害された。

 さらに、ChAdOx1 nCov-19ワクチン関連の血栓性イベントが疑われ、ELISAによるPF4-ヘパリン複合体抗体検査が陽性だった追加症例を加え、計28例で検討した。

 その結果、全例がヘパリンなしでPF4存在下の血小板活性化アッセイでも陽性を示した。血小板活性化は高濃度ヘパリン、Fc受容体遮断モノクローナル抗体、免疫グロブリン(10mg/mL)の添加により阻害された。

 さらに、PF4またはPF4-ヘパリンアフィニティ精製抗体を用いた検討でもPF4依存性の血小板活性化が確認された。

 以上を踏まえ、同氏らは「ChAdOx1 nCov-19ワクチン接種は、臨床的自己免疫性HITに類似し、PF4に対する血小板活性化抗体を介した免疫性血栓性血小板減少症をまれに引き起こす可能性がある」と結論。治療選択肢として、高用量免疫グロブリン静脈内投与による血小板活性化の阻害、HITの治療に通常使用される非ヘパリン製剤の抗凝固薬などを挙げている。

(太田敦子)