新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬候補とされるヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬バリシチニブについて、有効性などを検証した第Ⅲ相試験COV-BARRIERの結果を製造・販売元のイーライリリーが4月8日(米国時間)に発表した。COVID-19の入院患者を対象にステロイドや抗ウイルス薬レムデシビルなどを含む標準療法にバリシチニブ上乗せ効果を検証したところ、主要評価項目である高流量酸素投与または人工呼吸管理への移行、死亡について、プラセボ群との有意差は得られなかった。一方、全死亡率を38%低下させるなど死亡率に影響を及ぼす可能性が示された。同剤は関節リウマチの治療に用いられており、COVID-19に対する免疫抑制効果だけでなくウイルスの増殖抑制効果も期待されている。

上乗せ効果を検証、8割にステロイド、2割にレムデシビル

 COV-BARRIERは、標準療法(副腎皮質ステロイド、抗マラリア薬、抗ウイルス薬、および/または抗菌薬アジスロマイシン)で治療を受けているCOVID-19入院患者を対象に、バリシチニブの上乗せ効果を検証する初の国際共同二重盲検プラセボ対照ランダム化比較試験。2020年6月に開始され、COVID-19による入院率が高い米国、ブラジル、メキシコ、アルゼンチン、ロシア、インド、英国、スペイン、イタリア、ドイツ、日本、韓国から、酸素吸入を必要としない、または必要とする入院患者、高流量酸素/非侵襲的人工呼吸管理を必要とする入院患者1,525例を登録した。ベースライン時に対象の79%は副腎皮質ステロイド(デキサメタゾンが91%)、19%がレムデシビル、一部の患者は両薬の投与を受けていた。

 対象をバリシチニブ4mgを上乗せする群(764例)とプラセボ群(761例)に1対1でランダムに割り付け、最長14日間または退院まで投与した。

 主要評価項目は、投与開始から28日時点までに高流量酸素投与を含む非侵襲的人工呼吸管理、または体外式膜型人工肺(ECMO)を含む侵襲的人工呼吸管理の新規開始、死亡とした。

 解析の結果、バリシチニブ群ではプラセボ群と比べ、非侵襲的または侵襲的人工呼吸管理への移行または死亡のリスクが低かったものの、有意差はなかった〔オッズ比(OR)0.85、95%CI 0.67~1.08、P=0.1800)〕。

死亡率低下の可能性を示唆、新たな有害事象も認められず

 一方で、全死亡率はプラセボ群の13.1%に対し、バリシチニブ群では8.1%と38%有意に低下させた〔ハザード比(HR)0.57、95%CI 0.41~0.78、名目のP=0.0018)〕。また、重症度によるサブグループ全てにおいて、バリシチニブ群での死亡率の低下が認められた。中でもベースライン時に非侵襲的人工呼吸管理を受けていた患者の死亡率は、プラセボ群の29.4%に対し、バリシチニブ群では17.5%と、低下幅が最も顕著だった(同0.52、0.33~0.80、名目のP=0.0065)。

 有害事象、重篤な有害事象の発現率は、バリシチニブ群(44.5%、14.7%)とプラセボ群 (44.4%、18.0%)で同程度。重篤な感染症と静脈血栓塞栓症(VTE)の発現率は、バリシチニブ群でそれぞれ8.5%、2.7%、プラセボ投与群では9.8%、2.5%、バリシチニブ投与と関連する可能性のある新たな有害事象は確認されなかった。

 バリシチニブは昨年(2020年)11月19日に米国食品医薬品局(FDA)から、酸素吸入、侵襲的人工呼吸管理、またはECMOを必要とするCOVID-19の疑い例、または検査でCOVID-19と確定した入院中の成人患者、および2歳以上の小児患者に対し、レムデシビルとの併用による緊急使用許可を受けている。承認には至っていないものの、これまでに全世界で20万人を超えるCOVID-19患者に対し投与されたと推定されている。

(小沼紀子)