菅義偉首相は18日、就任後初の訪米から帰国した。安全保障で踏み込んだ共同声明を発表するなど不得手とも指摘される外交で「成果」を得て、与党は政権浮揚を期待する。ただ、次期衆院選に向け、新型コロナウイルスへのさらなる対応、東京五輪の開催判断、25日投開票の衆参3選挙など難題は山積で、政権運営は難しい局面が続く。
 18日までの訪米で、バイデン大統領から就任後初の外国賓客として迎えられた首相は、対面で長時間の会談を行うなど、コロナ禍で限られた日程の中でも「特別待遇」を受けた。
 中国が軍事的圧力を強める台湾問題では、共同声明に「台湾海峡の平和」を明記。両氏が重視する気候変動問題や経済分野でも協力を確認した。自民党の外相経験者は「初めてとしては成功」と評価。ベテラン議員は「政権への追い風になる」と語った。
 大型連休中はインド、フィリピンを歴訪、6月には英国での先進7カ国(G7)首脳会議も予定され、国際舞台での露出は増す。国内に目を転じれば、肝煎りのデジタル改革関連法案は今国会成立を見込む。自民党内で「こども庁」創設に向けた議論も本格化する見通しで、首相は衆院選をにらみ政権への期待感を盛り上げたい考えだ。
 一方、難題も横たわる。新型コロナに関する「まん延防止等重点措置」は10都府県に広がり、大阪府では3度目の緊急事態宣言が排除できない。今後の推移によっては、感染者数の増減と連動する傾向を示す内閣支持率を脅かしかねない。
 感染状況は、7月23日の開幕まで残り約3カ月となった五輪開催の判断にも影響しそうだ。自民党の二階俊博幹事長が「中止も選択肢」との考えを示し国内外に波紋を広げた。日米首脳会談で開催への決意を伝えた首相に、バイデン氏が「努力」を支持するのにとどめたことも懸念材料だ。
 25日には衆院北海道2区補欠選挙と参院の長野選挙区補選、広島選挙区再選挙の投開票がある。自民党は北海道で候補擁立を見送り、長野と広島については苦戦も指摘される。勝負の行方によっては、訪米の「盛り上がり」に水を差し、自民党内で不満が高まるのは避けられない。
 衆院は20日、参院は21日にそれぞれ首相から訪米報告を受け、質疑を行う。連休明けには衆参予算委員会の集中審議が開かれる見通し。立憲民主党など野党側は、コロナ対策、自民党で相次ぐ「政治とカネ」の問題などをテーマに首相を徹底追及する方針で、与野党の対決色が一段と強まることも予想される。 (C)時事通信社