高齢者における降圧薬使用と皮膚がんリスクの関連を検討したカナダの大規模住民研究(降圧薬処方群30万例超と対照群60万例超)で、サイアザイド系利尿薬使用と皮膚がん発症リスクとの関連が示された。カナダ・University of TorontoのAaron M. Drucker氏らがCMAJ(2021; 193: E508-E516)で報告した。(関連記事「降圧薬の口唇がんリスクを再確認」)

降圧薬クラスごとにリスクを検討

 光感作物質を含む薬剤は、皮膚の光感作性を亢進させて皮膚がんリスクを高める可能性があるが、主要な降圧薬は全て光感作性である。

 サイアザイド系利尿薬のヒドロクロロチアジドについては、北欧における最近の症例対照研究2件で非メラノーマ皮膚がん(NMSC:基底細胞がんおよび扁平上皮がん)リスク上昇との有意な関連が報告されたことを受け、同薬の添付文書に注意書きが加えられた。一方、他の降圧薬と皮膚がんとの関連、およびメラノーマの発症リスクについては明らかでなかった。

 Drucker氏らは、カナダ・オンタリオ州における1998~2017年の地域保健データを用いて、66歳以上の降圧薬処方患者1例に対し年齢・性が一致する対照2例を選出し、皮膚がんリスクを比較する発端コホート研究を実施した。

 降圧薬処方群は、初回降圧薬のクラス〔サイアザイド系利尿薬、ACE阻害薬、アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)、カルシウム拮抗薬、β遮断薬〕別に分類し、年間の累積投与量を世界保健機関(WHO)の規定1日投与量(DDD:Defined Daily Dose)を基に標準化した。index date前の一定期間に、降圧薬、光毒性を有する薬剤、免疫抑制薬の処方歴、および固形臓器移植歴、皮膚がん発症歴がある者は除外した。

 主要評価項目は初回NMSC発症までの期間、副次評価項目は進行NMSCおよびメラノーマ発症までの期間とした。

サイアザイド使用量の増加はNMSC、メラノーマいずれとも関連

 降圧薬処方患者約260万例のうち、対照が選出された30万2,634例(対照60万5,268例)のデータを解析に組み入れた。追跡期間中央値は8.9年(四分位範囲4.6~13.7年)であった。

 サイアザイド系利尿薬投与量の増加は、皮膚がんリスクの上昇と関連していた。年間投与量が1単位増加するごとの調整ハザード比(HR)は、NMSCが1.08(95%CI 1.03~1.14)、進行NMSCが1.07(同0.93~1.23)、メラノーマが1.34(同1.01~1.78)であった。

 他の降圧薬クラスとNMSCまたはメラノーマとの間に有意な関連は認められなかった。

 今回の研究は、適切な対照群の設定、曝露状況の経時的変化の考慮、累積投与量の標準化、降圧薬の併用状況の調整などにより、これまでの研究の欠点を改善している。一方で、対象は高齢者のみで、基底細胞がんと扁平上皮がん別の解析は行っていないという限界がある。

 Drucker氏らは「66歳以上の地域住民においてサイアザイド系利尿薬の累積投与量の増加は、皮膚がん発症リスクの上昇と関連していた。皮膚がん高リスク患者では、他の降圧薬による治療を考慮すべき」と結論し、「皮膚がんリスクはカナダ国内でも地域により異なるため、別の集団や地域での再現研究が必要」と付言している。

(小路浩史)